2022 年 128 巻 1 号 p. 427-443
下川オフィオライトの玄武岩類は全般的に発泡度が低いが,一部の比較的厚いドレライト岩床が異常に高い発泡度を示す.本岩体はN-MORBで,大半が無発泡であることから起源マグマは揮発性成分に枯渇していた.高発泡ドレライト岩床の接触急冷縁が無発泡で内部が気泡に富むことから,貫入後に揮発性成分が飽和した.岩床から見つかった曹長石-カリ長石脈は,厚さが太く,不規則な境界をなし,他の脈に切られており,比較的大きな丸みのある気泡を含む.脈はまだ完全に固結していないドレライト中で形成された.脈は粗面岩質の組成を示しMORBの残液ではない.脈の鉱物化学組成は低温のソルバス以下の晶出を示す.気泡に富むドレライトの全岩化学組成はK2OとRbが高い.以上のことから脈は熱水流体の痕跡である.つまり岩床の高発泡の要因は,周囲の堆積物からマグマに熱水流体としてもたらされた揮発性成分であると考えられる.