地質学雑誌
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論説
紀伊半島東部紀伊長島-大紀地域における四万十帯玄武岩類の起源
中江 訓
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2023 年 129 巻 1 号 p. 89-104

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抄録

紀伊半島東部の紀伊長島-大紀地域に分布する四万十帯上部白亜系付加複合体の玄武岩類について,その起源・噴出場を解明する目的で螢光X線分析による主要成分元素と微量元素の組成を求めた.6試料を分析した結果,5試料は比較的未分化な玄武岩質マグマに由来したことが示唆され,判別図などから中央海嶺に起源を持つ玄武岩であることが判明した.また1試料はより分化が進行した玄武岩質マグマに由来し,判別図では海洋島玄武岩を起源とする可能性も指摘できるが,その確証は得られなかった.玄武岩類の産状・層序関係として,チャートあるいは赤色珪質岩を密接に伴う場合と砕屑岩類と接して露出する場合があるが,少なくとも前者の玄武岩類が噴出した環境として,陸源性砕屑物が流入し得ない遠洋性大洋域の少なくとも炭酸塩補償深度より深い海底が想定される.本地域の玄武岩類に関わるこれら二つの事象(地球化学的特徴と層序学的関係)は互いに矛盾することなく,同一の結論を導くものである.

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© 2023 日本地質学会
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