地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
総説
地球と火星に見られる球状鉄コンクリーションの産状と成因
長谷川 精 吉田 英一城野 信一
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 129 巻 1 号 p. 199-221

詳細
抄録

球状鉄コンクリーションは,地球だけではなく火星の地層でも見られる.本稿では,地球や火星の鉄コンクリーションの産状や元素組成とその成因について,提示されている証拠や仮説を網羅的に紹介した.ユタ州やモンゴルの証拠に基づき,鉄コンクリーションはカルサイトコンクリーションが先駆物質であり,地層中に浸透した鉄分に富む酸性流体との中和反応により形成されたことが示された.さらにメリディアニ平原の鉄小球(ブルーベリー)とゲールクレーターの球状ノジュールの証拠と比較することにより,火星でも先駆物質の炭酸塩小球と,酸性流体の浸透に伴う中和反応により形成された可能性が示唆された.すなわち火星の球状コンクリーションは,ノアキス紀後期~へスペリア紀前期(38~37億年前)の厚いCO2大気下の炭酸塩沈殿と,ヘスペリア紀後期(35~32億年前)の酸性流体による溶解を示す,太古の環境変遷史を記録する重要な遺物である可能性が明らかになった.

著者関連情報
© 2023 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top