2023 年 129 巻 1 号 p. 633-642
徳之島西部の秋利神川河口には,泥質片岩と砂質片岩からなる岩塊が露出していて,その北東面から東面にかけて暗灰色の脈(暗色脈)が貫入している.暗色脈は厚さが10ないし20 cm程度であり,細粒の基質と岩片からなる.岩片のほとんどは泥質片岩と砂質片岩であり,稀に角閃岩が認められる.暗色脈は基質を含めて母岩と同程度に固結している.岩片のサイズ分布が尺度不変であることと,粉末X線回折プロファイルにおいて非結晶質物質に特徴的なハローがないことから,暗色脈の主要な構成物は破砕生成物である.暗色脈の基質においてアナテースの微細粒が環状に配列して方解石とチタナイトを囲んでいる.これはCO2と水の存在下でチタナイトが分解されたことを示す.秋利神川河口の暗色脈は,変成岩体内部に生じた過剰な流体圧が断層または剪断帯の活動を誘発し,破砕生成物が流動化して貫入したカタクラスティック脈の末端部であると推察される.