地質学雑誌
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論説
紀伊半島南部海岸地域の田子含角礫泥岩層「サラシ首層」の時代と成因について
別所 孝範 鈴木 博之山本 俊哉檀原 徹岩野 英樹平田 岳史
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2024 年 130 巻 1 号 p. 35-54

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抄録

紀伊半島南部海岸にはさまざまな大きさの砂岩角礫を含む泥岩(田子含角礫泥岩層,通称「サラシ首層」)が分布する.この地層の形成については泥火山説と海底土石流堆積物説がある.本層は下位より「大ザラシ」,「富山礫岩」,「小ザラシ」の三つのユニットに分けられる.「大ザラシ」中の砂岩角礫は長石質ワッケ~アレナイトで牟婁付加シークェンス(AS)の砂岩組成に一致する.砂岩角礫のU–Pb年代値は32~62 Maを示し,これらは牟婁AS起源と推定される.「大ザラシ」中の異地性ブロックである成層礫質砂岩は27 Ma(後期漸新世)で,牟婁AS(前期漸新世)よりも若く.この事実はダイアピル説とは相容れない.「大ザラシ」は地層としての特徴を持ち,海底土石流堆積物と考えられる.「サラシ首層」は前弧海盆内の一部でスラストにより持ち上げられた付加体の隆起帯から,陸側の浅海域に堆積した付加体崩壊堆積物ならびに浅海堆積物であると推定される.

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