地質学雑誌
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北サハリンのシュミット半島第三系の巨大・微小コンクリーション
小笠原 憲四郎長谷川 四郎久田 健一郎三橋 順川田 洋平Gladenkov, Y.Barinov, K.Stupin, S.
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1997 年 103 巻 1 号 p. I-II

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抄録

サハリン北端部のシュミット半島地域には, 海岸沿いを中心に古第三系から新第三系の鮮新統にいたる連続的な層序が観察できる. この地域の第三系のは槙山次郎の探検記(1923)や層序の概要(1924), さらに本邦常磐炭田地域との貝類化石群の類似性などが議論され, いわゆる漸新世の「マチガル浅貝動物群」(Makiyama, 1934) の模式地の一つとして古くから知られてきた. 筆者らは国際学術研究 (代表; 小笠原憲四郎)として, 1996年8月19日から9月9日の間, ロシア科学アカデミー地質学研究所の研究者と共同で本地域の第三系を調査した. 踏査地域はサハリン最北端部のマチガル湖からピリーイ岬基部及び半島西海岸のボルドナヤー川からマタ川のルートで, これらの地域には道路や人家は全くない. そのため, 現地へのアプローチは北サハリンの石油町オハからヘリコプターをチャーターし, 一部で大型 6輪車を使用し, キャンプ生活をしながらの調査であった. 本地域の第三系は白亜系の枕状溶岩と不整合, 一部断層関係で接し, 下部からマチガル層, トゥミ層, ビリ層, カスケード層などに区分されている. マチガル層は含炭の砂岩泥岩であるが, その上位の下部一中部中新統は基本的に層理の発達した硬質黒褐色シルト岩から構成されている. これらの中新統には, 最大で長径10m短径5mにも達する巨大石灰質コンクリーションが頻繁に認められた. 更に一部のタービダイト性砂岩には拳大からあずき粒大の微小コンクリーションなど, 全体的にはさまざまのサイズと形態を呈するコンクリーションが認められた. 一般にコンクリーションは続成作用, 特に初期続成作用の過程で形成され, 核を中心に成長するため球形を呈することが多い. またこの初生的な成長を考慮して, 地層の圧縮変形(コンパクション)の度合いなどの見積もりなどに利用されている. ここに示した長径7mにも達する巨大なコンクリーションから微小なものまでの産状は, その形成過程や地層の圧密などを考える上で絶好の素材であると考える.

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