日本語の研究
Online ISSN : 2189-5732
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接続助詞用法の「~べきを」の推移
──古代語から現代語へ──
佐伯 暁子
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2022 年 18 巻 2 号 p. 1-18

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抄録

本稿では,助動詞「べし」の連体形「べき」に接続助詞「を」が付接した「~べきを」について,中古から近世における使用実態を調査するとともに,形式名詞に付接する接続助詞的な「を」との関係を考察する。「~べきを」は中古には頻繁に用いられていたが,中世前期の過渡期を経て,中世後期には使用されにくくなった。ただし,逆接の意味を担う形式として語彙的に固定化することで,現在でも細々と使用されている。「~べきを」が使用されにくくなるのと並行して,「~ところを」が出現し,現代語では「~べきを」より「~ところを」の方が圧倒的に多く使用される。「べし」,接続助詞「を」,準体句の衰退という古代語から近代語への変化に伴い起こった「~べきを」の衰退が,「~ところを」を生み出す要因になったと考えられる。

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