抄録
堆積シーケンスの形成は相対的海水準変動と堆積物供給量に大きく支配されている.これら2つの要因の時空変化にともなって, 海進と海退や古水深の変化が発生する.したがって, 地層から識別される海進と海退や古水深の変化は必ずしも相対的海水準変動と一致するものではない.また, 堆積物供給量の空間的変化に対応して, 相対的海水準が一定の場合でも, 海進と海退が同時に発生することがある.このことは, 海進期堆積体と高海水準期堆積体の境界をなす最大海氾濫面が必ずしも同時間面を示すものでないことを意味している.さらに, 堆積速度の変化に注目して堆積物供給量の時空変化が比較される場合があるが, 堆積速度の大小関係と堆積物供給量の大小関係とは必ずしも同じ変動量ではない.このようなシーケンス層序学の基本的枠組みの相互関係を整理しておくことが, シーケンス層序学をさらに発展させ, 新しいモデルを構築していくために不可欠と考えられる.