地質学雑誌
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105 巻, 7 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 石原 与四郎, 宮田 雄一郎
    1999 年 105 巻 7 号 p. 461-472
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    岡山県北部の中期更新統(~0.5 Ma)蒜山原層下部は湖成縞状珪藻土を主体とし, 陸源砕屑物や化学的沈殿物をほとんど含まない.珪藻土は層厚約2 mmの白/黒ラミナからなり, それぞれ卓越する浮遊性珪藻種から1組で1年を示す年縞と考えられている.この年縞の層厚を顕微鏡下および画像解析を用いて計測し, 層厚の時系列変化と周期性を検討した.その結果, 厚さ16 mの区間で約8000年分の連続記録が得られ, 毎年の珪藻生産量を表す縞の層厚には太陽活動や気候変動に関連すると考えられる11年や22年, 35年および100年などの周期成分の含まれていることが示された.
  • 青木 豊樹, 黒川 勝己
    1999 年 105 巻 7 号 p. 473-479
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    長野地域の猿丸層基底部のT 1火山灰層, 上部層上部のT 4火山灰層は, 新潟地域の浜忠層基底部の吉川パミス質(Ykp)火山灰層, および魚沼層群中部層基底部のSK 110火山灰層にそれぞれ対比される.T 1およびYkp火山灰層は多孔質型ガラスが多く, 重鉱物はホルンブレンドと斜方輝石を主とするガラス結晶質火山灰層で, 火山ガラス, ホルンブレンド(mg*=0.70-0.72)および斜方輝石(mg*=0.60-0.65)の化学組成はそれぞれ一致する.T 4およびSK 110火山灰層はともに扁平型ガラスが多く, 黒雲母が多いガラス質火山灰層で, 火山ガラスの化学組成は一致する.以上のことから, 猿丸層の新潟地域の浜忠層(西山層下部)基底部から魚沼層群に対比され, その年代は鮮新世前期末に始まり更新世前期にわたる(約3.9~1.6 Ma)と考えられる.これらの対比から, 北部フォッサマグナ地域において長野地域と新潟地域とは顕著な同時異相関係にあったことが年代論的にも明らかとなった.
  • 林 広樹, 柳沢 幸夫, 鈴木 紀毅, 田中 裕一郎, 斎藤 常正
    1999 年 105 巻 7 号 p. 480-494_1
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    東北日本における中期中新世の高精度な複合微化石層序を樹立することを目的として, 岩手県一関地域の中新統について微化石群集の検討を行った.一関地域の中新統は下位より下黒沢層(再定義), 上黒沢層(新称)と厳美層とに区分される.上黒沢層は下黒沢層を部分不整合に覆い, 厳美層は上黒沢層を不整合に覆う.このうち海成層の下黒沢層および上黒沢層は珪質・石灰質を問わず微化石を連続的に産する.産出した微化石から, この地域の下黒沢層および上黒沢層はBlow(1969)の浮遊性有孔虫化石帯N. 10~N. 14帯に, Okada and Bukry(1980)の石灰質ナンノ化石帯CN 5 a~CN 5 b帯に, Yanagisawa and Akiba(1998)の珪藻化石帯NPD 4 Bb~NPD 5 C帯に, 本山・丸山(1998)の放散虫化石帯E. inflatum A~L. magnacornuta帯に対比されることが明らかになった.
  • 束田 和弘, 高橋 泰, 小澤 智生
    1999 年 105 巻 7 号 p. 496-507
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    飛騨外縁帯福地地域に分布する, 空山層と水屋ヶ谷層(中部ペルム系)の関係については不整合説と断層説が存在し, また空山層にはシルル~白亜系の諸説が存在した.筆者らは, 岐阜県上宝村のイラノ谷上流で, 空山層が水屋ヶ谷層の西方延長と思われる地層を整合に覆う露頭を確認した.両層の接触部には, ガウジや剪断変形など断層の存在を示すものは見られず, 且つ両層の間の岩質変化は漸移的である.ここでは水屋ヶ谷層に北側上位の堆積構造が存在し, 水屋ヶ谷層は空山層の層位的下位に位置する.また, 柏当谷(上宝村)において, 空山層の含石灰岩礫礫岩の基質より中期ペルム紀の紡錘虫化石を得た.これらの化石の内部は, 基質と同様の凝灰質砕屑岩によって充填されており, 空山層は紡錘虫化石が示す時代とほぼ同時期に堆積した可能性が高い.したがって, 上述した2つの事実より, 空山層は中部ペルム系の可能性が高いと考えられる.
  • 伊藤 慎
    1999 年 105 巻 7 号 p. 508-520
    発行日: 1999/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    堆積シーケンスの形成は相対的海水準変動と堆積物供給量に大きく支配されている.これら2つの要因の時空変化にともなって, 海進と海退や古水深の変化が発生する.したがって, 地層から識別される海進と海退や古水深の変化は必ずしも相対的海水準変動と一致するものではない.また, 堆積物供給量の空間的変化に対応して, 相対的海水準が一定の場合でも, 海進と海退が同時に発生することがある.このことは, 海進期堆積体と高海水準期堆積体の境界をなす最大海氾濫面が必ずしも同時間面を示すものでないことを意味している.さらに, 堆積速度の変化に注目して堆積物供給量の時空変化が比較される場合があるが, 堆積速度の大小関係と堆積物供給量の大小関係とは必ずしも同じ変動量ではない.このようなシーケンス層序学の基本的枠組みの相互関係を整理しておくことが, シーケンス層序学をさらに発展させ, 新しいモデルを構築していくために不可欠と考えられる.
  • 牧野 泰彦, 増田 孝裕, 松本 現, 藤曲 和摩
    1999 年 105 巻 7 号 p. XIII-XIV
    発行日: 1999年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    1998年8月26日から30日にかけて, 栃木県と茨城県の那珂川上流域は激しい集中豪雨に見舞われ, 那須地域の余笹川では総雨量1200mmを越えて流域や河床の状態は一変した. さらに, 水戸市周辺の那珂川本・支流はその17時間後に水位が上昇し, 12年振りに氾濫した.
    この洪水のようすはテレビ・新聞によって, 詳しく報道された. 水戸北方の那珂川は自然堤防帯の様相を示し, 砂礫質の蛇行州が形成されている. 那珂川の砂礫堆積物はこのような水位上昇期のみに運搬・堆積が行われる. 今回の洪水によって, 蛇行州周辺で特に堆積作用が進み, 微地形の変化や運搬された砕屑物の性質や厚さなどが観察できる.
    ここでは, 水戸市国田の蛇行州にみられる微地形および堆積物の状況を写真で示す. 洪水による被害状況は, 多くの機関によって調査されており, 緊急調査報告書が茨城大学工学部システム工学科・広域水圏環境科学教育研究センターから発行されている.
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