抄録
日高変成帯北部のエサオマントッタベツ岳地域において, 斜方輝石や単斜輝石を含有するIタイプトーナル岩を見いだした.この岩石は下部地殻性のSタイプトーナル岩体内部の小岩体として産する.この岩石について岩石学的研究を行った.その結果, このIタイプマグマはN-MORB組成の塩基性変成岩類が部分溶融して形成されたことが明らかになった.また, その塩基性変成岩類の溶融度は, 主成分元素のマスバランスから29%程度, 微量元素のモデル計算から10~30%程度であったと推定される.このIタイプトーナル岩は, 日高変成帯の最下部地殻のアナテクシスにより発生したマグマであると考えられる.