超高圧下では, ザクロ石にナトリウムが固溶することがある. 置換関係を明確にした上であれば, 定性的ではあるものの, ザクロ石中のナトリウムが超高圧変成作用の指標となり得ることが知られている. 筆者は, 中国蘇魯超高圧変成帯の東部に位置する栄城(Rongcheng)に産する大理石とそれに包有されるエクロジャイトブロックが共に超高圧変成作用を被っていることを示した(Kato et al., 1997). このエクロジャイト中のザクロ石には,
[8]Na
[6]TiCa
-1Al
-1 の置換関係によりナトリウムが最大0.2重量%含まれている. このザクロ石の組成面分析を行うと, ナトリウムとチタンのパターンが一致するため, 視覚的に置換関係を認識することができる. したがって, ザクロ石のどの部分が超高圧変成作用時に形成されたのかを容易に知ることが可能になるので, 超高圧変成岩の形成史を解析する上で重要な分析手段であると考えられる. 本稿では, 蘇魯超高圧変成帯の大理石およびそれに包有されるエクロジャイトの産状と, エクロジャイト中のザクロ石のNa-Ti組成面分析の結果を紹介する.
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