抄録
南部北上帯南西部の母体-長坂地域で, 南北性の左横すべり脆性剪断帯-兵士沢剪断帯-を記載した.剪断帯の模式ルートにおいて, 母体変成岩類と南部北上帯古生界の基盤である角閃岩類とは, 境界付近の幅約50 mで著しくカタクレーサイト化している.特に角閃岩起源のカタクレーサイトは, フラクタル次元1.8の破砕岩特有の粒径分布を示した.兵士沢剪断帯は, 白亜紀バランジュ期の褶曲を切り, 白亜紀前期の花崗岩類に貫入されるため, その活動時期は南部北上帯中部の日詰-気仙沼断層に代表される, 白亜紀前期左横すべり断層形成時期と重なる.白亜紀前期の左横すべり剪断運動が, 南部北上帯西部まで及ぶ可能性が示唆された.