地質学雑誌
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106 巻, 10 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • サプリ H., 熊井 久雄
    2000 年106 巻10 号 p. 651-658
    発行日: 2000/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    ジャワ島のバヤット地域の古第三系は, その岩相層序学的特徴からから, 下位より主として石灰岩からなるガンピン累層と, 礫岩, アルコーズ砂岩とそれらに挟在する頁岩からなるウンガル累層に区分される.従来, これらの堆積物は, 大型有孔虫と浮遊性有孔虫などの組み合わせに基づいて始新統に対比されてきた.筆者等はこのバッヤト地域の堆積物について, 石灰質ナンノ化石の群集組成を明らかにしたうえで, 従来の年代層序を再検討した.その結果, 2箇所のセクションから20タクサの石灰質ナンノ化石を確認し, その組み合わせから, この地域のウンガル累層の堆積年代を後期始新世から前期漸新世のCP 14からCP 16 cに対比した.ウンガル累層下部と上部の境界ではDiscoaster saipanensisとDiscoaster barbadiensisの消滅が認められ, この境界が漸進世/始新世境界を指示することが判明した.
  • 佐々木 みぎわ, 大藤 茂
    2000 年106 巻10 号 p. 659-669
    発行日: 2000/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    南部北上帯南西部の母体-長坂地域で, 南北性の左横すべり脆性剪断帯-兵士沢剪断帯-を記載した.剪断帯の模式ルートにおいて, 母体変成岩類と南部北上帯古生界の基盤である角閃岩類とは, 境界付近の幅約50 mで著しくカタクレーサイト化している.特に角閃岩起源のカタクレーサイトは, フラクタル次元1.8の破砕岩特有の粒径分布を示した.兵士沢剪断帯は, 白亜紀バランジュ期の褶曲を切り, 白亜紀前期の花崗岩類に貫入されるため, その活動時期は南部北上帯中部の日詰-気仙沼断層に代表される, 白亜紀前期左横すべり断層形成時期と重なる.白亜紀前期の左横すべり剪断運動が, 南部北上帯西部まで及ぶ可能性が示唆された.
  • 川畑 博, 周藤 賢治
    2000 年106 巻10 号 p. 670-688
    発行日: 2000/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    四国北東部の七宝山体, 弥谷山体, 我拝師山体を構成する瀬戸内火山岩類は, 下位に流紋岩質火砕岩・溶岩, 上位に安山岩質~デイサイト質溶岩・火砕岩が累重する共通の層序を示す.流紋岩質火砕岩の特徴から, 流紋岩質岩の活動時, 本地域には水域が点在し, 火砕岩は起伏のある基盤地形を埋めるように堆積したと推定される.一方, 安山岩質~デイサイト質岩のうち, 普通角閃石や黒雲母などの含水鉱物を斑晶に含む岩石は, これら火山岩類の活動時期のより初期に集中して噴出した.上記の3山体は, 各山体内の火道からもたらされた噴出物が重なることで形成された複合火山といえる.また, 瀬戸内火山岩類中の複合溶岩を構成する岩石は, 玄武岩からデイサイトに限られており, 流紋岩は複合溶岩の構成メンバーになっていない.弥谷山体にみられる複合溶岩は, 岩脈状のマグマ溜まり内で成層していた組成の異なるマグマが混合することで形成された可能性がある.
  • 林 広樹, 高橋 雅紀
    2000 年106 巻10 号 p. 689-702
    発行日: 2000/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    本邦新第三系の浮遊性有孔虫年代尺度を確立するためには, 日本付近で有用な生層準を多く認識する必要がある.本研究では, 栃木県烏山地域に分布する荒川層群小塙層上部-大金層について, 浮遊性有孔虫生層序の検討を行った.その結果, 小塙層上部~大金層中部にかけての層準で浮遊性有孔虫が連続的に検出され, 11の生層準が認識された.得られた生層準によりBlow(1969)の浮遊性有孔虫化石帯と比較すると, 大金層最下部がBlow(1969)の浮遊性有孔虫化石帯N. 12~N. 13帯に, 大金層下部~中部がN. 14帯に対比される.また, すでに報告されている放射年代を用いて各生層準の年代値を提示した.
  • ヨング K. ド, 栗本 史雄, ガイザ P.
    2000 年106 巻10 号 p. 703-712
    発行日: 2000/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    三波川帯飯盛ユニット(点紋帯)から得られた40Ar/39Ar年代73.0±0.8 Ma(2σ)は, 緑色片岩相の岩石が白雲母の閉鎖温度を通過した冷却時期に相当する.一方, 御荷鉾帯の2試料の40Ar/39Ar年代は, 96.4±1.0 Maと102.9±1.0 Ma(いずれも2σ)を示し, 両者には700万年の差がある.その理由として, 前者がより細粒な変成白雲母から構成されること, あるいは両者の主たる変成時期が異なっていたこと, などが考えられる.いずれにしても毛原ユニットと飯盛ユニットの主たる変成作用の時期は明らかに異なっていたと考えられる.毛原ユニットの年代スペクトラムは, 増大する脱ガスの間に見かけの年代が増大する特徴を示す.このような階段状の年代スペクトラムは, 放射起源の40Arが一部損失したことを示すと解釈され, 毛原ユニットから200~400 m離れて通過する有田川構造線の構造運動に影響を受けた結果とみなすことができる.
  • 星 博幸, 伊東 宣貴, 本山 功
    2000 年106 巻10 号 p. 713-726
    発行日: 2000/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    愛知県設楽地域に分布する北設亜層群について岩相層序と放散虫化石を検討した.調査地域の北設亜層群は全体的に上方細粒化を示し, 下位から田口層, 川角層, 大野層, 門谷層に区分される.大野層と門谷層の14露頭から石灰質ノジュールサンプルを採取した.3サンプルからCenosphaera coronata, Cenosphaera cf. coronataformis, Cyrtocapsella tetraperaを含む放散虫化石群集が得られた.C. tetraperaが産出するため, 大野層と門谷層の堆積年代は前~中期中新世の範囲内である.加えてC. cf. coronataformisが産出することから, これらの地層はC. coronataformis帯(Chron C 5 Cr~C 6 n : 約17~20 Ma)に対比される可能性が高い.したがって, 北設亜層群の上半部は17~20 Maの期間に堆積したと結論され, 北設亜層群のほぼ全体がこの期間に形成されたと考えられる.今回の結果は, 北設亜層群と長野県下伊那地方の下部中新統富草層群が対比されるとする従来の意見を支持する.
  • 田沢 純一, 楊 偉平, 三宅 幸雄
    2000 年106 巻10 号 p. 727-735
    発行日: 2000/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    飛騨外縁帯森部地域のデボン系呂瀬層(新称)上部の淡緑色酸性凝灰岩から後期デボン紀を示す腕足類Cyrtospiriferと鱗木Leptophloeumの化石が発見され, Cyrtospirifer sp. A, Cyrtospirifer sp. B, Leptophloeum rhombicum Dawsonと命名, 同定された.これらの化石産出により飛騨外縁帯にも南部北上帯, 黒瀬川帯と同様, 主に火山砕屑岩, 砕屑岩からなりCyrtospirifer, Leptophloeumの化石を含む上部デボン系が存在することが確認された.以上のことから, 後期デボン紀に飛騨外縁帯-南部北上帯-黒瀬川帯は起源と形成を同じくする一連の地質体であるという説(田沢, 2000a, b)が支持される.またこれら3帯は後期デボン紀に, カザフスタン東部~新彊北部~内蒙古の一帯と古生物地理的に近縁であり, 地理的にもそれらに連続する海溝または大陸棚の一部をなしていたと推定される.
  • 島根大学地震災害調査団
    2000 年106 巻10 号 p. XIX-XX
    発行日: 2000年
    公開日: 2011/03/17
    ジャーナル フリー
    2000年10月6日の13時30分頃, 鳥取・島根県境付近深さ約10kmでM7.3(気象庁10月6日発表暫定値)の地震が発生した. 地震発生後も12日現在まで余震が続いている. 気象庁や京都大学防災研究所などの公表データによれば, 余震域の分布は, NNW-SSE方向に長さ約30km, 深さ7~17kmでほぼ垂直の面状である. 国土地理院の解析では左横ずれとされている. この地域は, 1989~1990年にもM5クラスの群発地震が起こったところである.
    震源地付近の被害は, 家屋の全半壊・道路の亀裂・斜面崩壊・墓石の回転や転倒・鳥居の倒壊・道路縁石の浮き上がり・橋脚のずれ・石垣の崩壊などである. 一方, 最大震度を記録した境港をはじめとする中海周辺での被害は, 干拓地の人工地盤の液状化による噴砂や道路の陥没, 建物の損壊などが目立つ.
    震源地の西伯町~日野町では, 家屋の全半壊や斜面崩壊, 道路の亀裂など, 被害の大きかった地域がNNW-SSE方向に帯状に分布する. これは余震の震央分布とほぼ一致している.
  • 酒井 治孝, 藤井 理恵
    2000 年106 巻10 号 p. XXI-XXII
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    松潘-甘孜(Songpan-Garze)褶曲帯はチベット高原の東縁に位置する, 揚子地塊とチャンタンーラサ地塊および古いユーラシアの地塊に挟まれた逆三角形の造山帯である. その東縁は竜門山スラストーナップ帯(幅30-50km, 総延長500km)を挟んで, 西四川前縁盆地に衝上している. またその西縁には左横ずれセンスの活断層である鮮水河(Xianshui He)断層が走っており, それに沿って中新世の花崗岩が貫入している. この褶曲帯は3つのユニットから構成されている. 基盤をなす原生代中期の花崗岩類と震旦系の酸性~中性火山岩類, カンブリア紀からペルム紀の堆積岩類と少量の炭酸塩岩・玄武岩類および厚さ6kmを越える三畳紀のタービダイトである. 古生層と三畳紀のタービダイトは, 揚子地塊上の受動的大陸縁辺堆積物とみなされる. この地層群は三畳紀後期(220~190Ma)のインドシニアン造山運動により, 変成作用と花崗岩の貫入を被り, 丹巴地域の古生層はガーネットー十字石-珪線石を含む変成岩になっている. 松潘-甘孜帯の衝上運動に伴い, その東縁のデボン紀から三畳紀後期の地層は南東方向に押し被さり, 竜門山帯のナップ・クリッペ群を生じている. その後ジュラ紀から白亜紀にかけて燕山造山運動を受け, 180~110Maの花崗岩が貫入した. さらに後期中新世のヒマラヤ期の運動によりスラスト群は再活動している.
    この報告は中国, 成都で開催された, 第15回ヒマラヤーカラコルムーチベットワークショップのプレ巡検(2000年4月15~20日)に基づいている. ワークショップの内容については, 日本地質学会News, 第3巻, 6号を参照されたい.
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