抄録
氷見灘浦地域の薮田層の珪藻化石層序を再検討し,薮田層の年代層序を見直し,広域火山灰と浮遊性有孔虫化石層序のNo.3 Globorotalia inflata bedの基底の年代を推定した.薮田層下部の珪藻化石層序を再検討した結果,Neodenticula koizumiiの初産出層準が従来よりも70m下位の,薮田層基底付近にあることが明らかとなった.N. koizumiiはその初産出層準付近では産出が稀で不連続であり,TT2火山灰層付近に認められる急増層準から上位では連続的に多産する.この急増層準の年代は,過去の日本周辺の深海掘削コア試料の珪藻化石層序の結果に基づき,3.0-3.1Maと見積もられる.珪藻化石層序の再検討結果に基づき,薮田層の古地磁気層序と標準古地磁気層序との対比を変更した.阿尾層と薮田層の境界付近はGauss ChronozoneとGilbert Chronozoneの境界に対比され,薮田層最下部の逆帯磁層準がMammoth Subchronozoneに対比される.以上の結果に基づき,従来の微化石層序の研究結果をあわせて堆積速度曲線を作成し,広域火山灰層とNo.3 G. inflata bed基底の年代を以下のように求めた.YT3火山灰層:約3.5Ma;MT2火山灰層:2.8-2.9Ma;UN火山灰層:2.6-2.7Ma;No.3 G. inflata bed基底:約3.1Ma.