地質学雑誌
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108 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 角田 史雄
    2002 年 108 巻 8 号 p. 483-498
    発行日: 2002/08/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    伊豆半島とフォッサマグナ地域の境界部に位置する足柄地域の変形を広域の水平圧縮応力場での構造形成とする見解がよく知られている.しかし,足柄層群全体を変形させている足柄背斜の一般走行は,隣接する丹沢や箱根の変形構造のそれとは,形成時期も形成場も異なっている.また,足柄背斜を切って発達するより小規模な撓曲帯,背斜の西翼の小規模な褶曲,急傾斜帯などは,足柄地域が深成-火山活動の作用をうけつつ隆起していく過程で形成されている.以上のことから,足柄地域の褶曲を中心とする変形構造は,広域的で一様な古応力場のもとでの変形構造の一部ではなく,プリュームあるいはストック状のマグマの貫入やそれに起因する地塊の隆起という局地的な応力場によって形成されたものである.
  • 渡辺 真人
    2002 年 108 巻 8 号 p. 499-509
    発行日: 2002/08/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    氷見灘浦地域の薮田層の珪藻化石層序を再検討し,薮田層の年代層序を見直し,広域火山灰と浮遊性有孔虫化石層序のNo.3 Globorotalia inflata bedの基底の年代を推定した.薮田層下部の珪藻化石層序を再検討した結果,Neodenticula koizumiiの初産出層準が従来よりも70m下位の,薮田層基底付近にあることが明らかとなった.N. koizumiiはその初産出層準付近では産出が稀で不連続であり,TT2火山灰層付近に認められる急増層準から上位では連続的に多産する.この急増層準の年代は,過去の日本周辺の深海掘削コア試料の珪藻化石層序の結果に基づき,3.0-3.1Maと見積もられる.珪藻化石層序の再検討結果に基づき,薮田層の古地磁気層序と標準古地磁気層序との対比を変更した.阿尾層と薮田層の境界付近はGauss ChronozoneとGilbert Chronozoneの境界に対比され,薮田層最下部の逆帯磁層準がMammoth Subchronozoneに対比される.以上の結果に基づき,従来の微化石層序の研究結果をあわせて堆積速度曲線を作成し,広域火山灰層とNo.3 G. inflata bed基底の年代を以下のように求めた.YT3火山灰層:約3.5Ma;MT2火山灰層:2.8-2.9Ma;UN火山灰層:2.6-2.7Ma;No.3 G. inflata bed基底:約3.1Ma.
  • 星 博幸
    2002 年 108 巻 8 号 p. 510-519
    発行日: 2002/08/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    奥羽脊梁山地の東縁部から採取された火砕岩試料は,鉛直軸回転運動を示唆する残留磁化方位を持つ.段階熱消磁結果の解析から,下部中新統水分層の5地点の高温成分磁化方位が決定された.ある露頭から採取された1地点の高温成分方位は逆帯磁でほぼ東向きであるが,そこから数km離れた本層模式地の4地点は同じ逆帯磁だが南西向きの方位で特徴づけられる.これらの方位を前期中新世の参照方位と比較すると,模式地において22Ma以降に100°を超える時計まわり回転が起こったと考えられる.調査したすべての地点は,奥羽脊梁山地東縁の断層の多い地帯にあり,回転運動が東縁に沿う断層運動に関連して起こったことが推定される.
  • 宮下 純夫, 海野 進, 足立 佳子
    2002 年 108 巻 8 号 p. 520-535
    発行日: 2002/08/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    オフィオライト研究は今新たな局面を迎えつつある.当初,過去の海洋地殻-上部マントルとみなされたオフィオライトの成因は,トルードス論争以降,その大部分は沈み込み帯上で形成されたとする見方が支配的となった.最近,オフィオライト成因論にとって重要な2つの新知見がもたらされた.沈み込み帯の反対側に位置しているチリ海嶺から島弧的特徴を有するMORBが報告されたこと,および,MORBの組成が大洋毎に微妙に異なっているという事実である.一方,世界最大・最良の露出状況のオフィオライトとして有名なオマーンオフィオライトに関しては,多数の研究がなされ,その地質や構造の特徴が良く理解されているにもかかわらず,その成因を始め様々な問題がいまだに論争されている.本論文では,オマーンオフィオライト研究をレビューするとともに,日本の調査隊による最新の成果の一端を紹介する.そして,オフィオライト研究の新たな局面について考察する.
  • 吉原 賢, 鈴木 紀毅, 永広 昌之
    2002 年 108 巻 8 号 p. 536-539
    発行日: 2002/08/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Manganese nodules containing well-preserved radiolarian fossils were discovered for the first time from the Kuzumaki-Kamaishi Belt. They are in the mudstone of chert-clastic sequences and considered to be formed in situ from the mode of occurrences. The radiolarian fauna comprises more than 120 species, including Archicapsa pachyderma, Stichocapsa tegiminis and Trillus elkhornensis. The presence of S. tegiminis and the absence of its descendant Tricolocapsa plicarum indicate early Middle Jurassic age of these nodules, suggesting that a Middle Jurassic accretionary complex exists in the Kuzumaki-Kamaishi Belt.
  • 河潟 俊吾, 田中 裕一郎, 本山 功, 野田 浩司, 山里 直哉, 瀬川 竜也
    2002 年 108 巻 8 号 p. 540-543
    発行日: 2002/08/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Calcareous nannofossil biostratigraphy was studied for the Neogene marine Shimajiri Group distributed in Kume-jima Island, Ryukyu Islands, southwestern Japan. Out of 21 samples examined in this study, 14 samples yielded calcareous nannofossils. As was reported in a previous study, Zones CN9 and CN12 of Okada and Bukry (1980) were recognized in this study. In addition, Subzone CN11b (early Pliocene) was newly identified in the lower parts of the sequence where the ages were previously assigned to the late Miocene (upper part of Zone CN9 or older). This result shows the difficulty of establishing the stratigraphy of the subjected group based mainly upon lithotratigraphy, particularly in the lower part. Additional biostratigraphic data are needed to establish the reliable stratigraphy of the marine Shimajiri Group in Kume-jima Island.
  • 足立 佳子, 戸松 敬, 岡沢 志樹, 宮下 純夫
    2002 年 108 巻 8 号 p. XVII-XVIII
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/12/14
    ジャーナル フリー
    オマーンオフィオライトはアラビア半島の東端に露出する世界最大級のオフィオライトで, 海洋地殻・上部マントル研究のメッカとなっている. 本オフィオライトには厚さが1~4kmの斑れい岩層が連続的に存在しており, 高速拡大軸で形成されたとする一つの根拠とされている(Nicolas, 1989). 斑れい岩は, 下位からモホ漸移帯斑れい岩, 層状斑れい岩, フォリエイテッド(foliated)斑れい岩, 上部斑れい岩の順に累重する. Fig.1 はシート状岩脈群と斑れい岩との境界部付近を示している. 上部斑れい岩は一般に不均質で, Fig. 2のように急激な結晶成長を示す樹枝状構造が観察されることもある. フォリエイテッド(foliated)斑れい岩は面構造は発達しているが, 比較的均質な岩相を示す. 層状斑れい岩には多様な層状構造が観察され(Fig. 3), 級化成層もしばしば認められる(Fig. 4), モホ漸移帯斑れい岩では, 優黒部と斜長石濃集部がシャープに繰り返す層状構造がしばしば観察される(Fig. 5). 層状構造は, 下位ではマントルー地殻境界(モホ面)に平行で, 上位ではシート状岩脈群の貫入面に収敏していく. この事実は, 斑れい岩の層状構造が上方に向かって水平から垂直方向へと変化することを示している. 層状構造と海嶺軸との関係や層状構造の形成メカニズムについては様々な見解がある(宮下ほか, 2002).
    我々は, オマーンオフィオライト北部で興味ある構造を幾つか見い出した. Fig. 6.Aは上位の構造が下位の構造に斜交している斜交葉理様構造である. Fig, 6. Bでは下位の構造が上位の構造によって切られている. クリスタルマッシュ内での流動は, 斜長石やマフィック鉱物の配列による線構造によって示される. Fig. 7は褶曲構造を示しているが, 規模の大きな褶曲構造は線構造に垂直方向の壁面で観察される. 著しい擾乱構造は斑れい岩層の比較的中~上位で観察されることが多い(Fig.8). Fig.9は大規模なトラフ構造と思われるもので, 下位のコントラストの著しい層状構造が上位の比較的塊状の斑れい岩によって削り込まれている. こうした構造の空間的な分布の特徴を検討していくことによって, 海嶺下でのマグマの運動像が解明されるであろう.
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