地質学雑誌
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房総半島南端,千倉層群下部の石灰質ナンノ化石に基づく本邦中部太平洋側の後期鮮新世表層海洋環境
亀尾 浩司斎藤 敬二小竹 信宏岡田 誠
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2003 年 109 巻 8 号 p. 478-488

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抄録

房総半島南部に分布する千倉層群布良層と南朝夷層の石灰質ナンノ化石を検討し,それらの地質時代と後期鮮新世における本邦太平洋側中部海域の表層海洋環境を考察した.おもな化石種の層位分布に基づけば,布良層と南朝夷層はおおむね3.3Maから2.4Maに相当する.一方,環境指標となる化石種の増減から,3.3Maから3.0Maの間,かつての房総海域には非常に温暖で,かつ栄養塩に乏しい外洋水が存在したことが指摘できる.ところが3.0Ma以降,この海域は寒冷化し始め,とくにその傾向は2.7Ma以降強くなる.このことはこの時期以降,房総海域に混合水塊の影響が強く及ぶようになったことを意味している.また,2.7Ma以降,東アジア大陸周辺からの表層水の流入が増加した可能性もあり,東アジア大陸の風化作用の強化に連動して,房総海域の海洋環境が変化したことも示唆される.

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