地質学雑誌
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漣川變成岩類のmineral facies
山口 貴雄
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1954 年 60 巻 703 号 p. 153-159

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抄録
1., いろいろの鑛物の共存は, それらが同時の生成のものであっても, 同一の熱力學的條件を示すものではなく, 同温異壓縮力の相を示すものであり, 又その上に, 移動性物質の移動に關する條件も含んでいるものである., 2., 殆どの變成過程にはH2O, K2Oのような移動性成分の出入がある., これは, 壓縮力が異方性であってこの作用により岩石が破かいされ, 節理, fissure, 割れ, 片理等のような移動性物質の移動の通路がひらかれること及び, 壓縮力の強さが變成地域内で不均一に分布していて, このことが移動性物質の移動の原動力になることに關係している., そしてこの物質の移動(變成分化)を通じて, 自由なK2Oの生産をした變成過程きそれを消費(metasomatism)した變成過程とは互に結びついている., 前者はchloritoid生成の過程とgarnet生成の過程であり, 後者はbiotite生成の過程であって, 變成作用の各時間的段階にこのK2Oの生産をした岩帶がその段階における主導的役割を果したと考えられる., この意味で漣川變成岩類の變成作用の前段階はchloritoid stage, 後段階はgarnet stageであるということが出来る., 尚, このようなopen systemの場合にはいわゆるmineralogical phase ruleは成立しないと考えられる., 3., biotiteの色には, 鑛物組成や片理發達の程度には關係なく, 何らかのprogressivityがある., 之はbiotiteの色が, 温度によって左右される何ものかのあらわれである, と考える他はない., 即ち, biotiteの色は温度の指示計であり得る, というのである., この點については多くの問題が將來に殘されている., 4., 以上のような考え方で, 變成作用を廣く調べて見ることが必要であると考える.,
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