日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T6-P-26
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T6.堆積地質学の最新研究
南オーストラリアに分布する現世土壌成炭酸塩の産状
*佐久間 杏樹村田 彬高島 千鶴狩野 彰宏
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抄録

土壌成炭酸塩とは、蒸発の盛んな乾燥地域の土壌中で間隙水から沈殿する炭酸塩であり、様々な年代・地域の陸成層からノジュールや層状カルクリートといった形態で産出し、過去の環境を知る手がかりとして用いられてきた。特に、土壌成炭酸塩の酸素・炭素同位体比は沈殿時の水の情報を記録することから、古環境を調べるうえで重要な手掛かりとなる。土壌成炭酸塩の酸素同位体比は降水の酸素同位体比と炭酸塩沈殿時の温度、沈殿時の水の蒸発量と関係があることが知られている(Cerling, 1984; Quade, 2014)。つまり、酸素同位体比の変化は研究地域の水循環や気候条件の変化を示していると解釈される(e.g., Levin et al., 2007)。また、形成時の温度を仮定することで土壌成炭酸塩の酸素同位体比から求められる降水の酸素同位体比は、高度と関係があることが示されており、過去の高度の推定にも用いられている(e.g., Rowley and Currie, 2006)。一方で、炭素同位体比は土壌中の有機物の炭素同位体比と大気二酸化炭素の混合率と関係して変化する。土壌中の有機物の炭素同位体比は植生の割合(C3植物、C4植物、CAM植物)によって異なる値を取り、植生の変化から気候条件の変化が解釈されている (Cerling, 1984)。また、有機物の炭素同位体比などを仮定して土壌成炭酸塩の炭素同位体比から大気二酸化炭素の炭素同位体を計算し、大気二酸化炭素濃度を推定する手法も確立されている(e.g., Breecker and Retallack, 2014)。 このように土壌成炭酸塩の酸素・炭素同位体比を用いて過去の環境を調べる研究は行われてきたが、地質学的な観点から現世土壌成炭酸塩の記載や酸素・炭素同位体分析、鉱物種の鑑定などを同時に行った研究例は少ない(Candy et al., 2012)。また、研究地域はヨーロッパや北アメリカなど一部の地域に集中しており、その他の地域における研究例は限られている。本研究では、オーストラリア南オーストラリア州の35地点にて、母岩や降水量などの条件が異なる現世土壌成炭酸塩の産状の観察を行い、炭酸塩沈殿物が集積している層準から試料を採取した。実験室にて、採取した試料の偏光顕微鏡による構造の観察や、バルク試料の酸素・炭素同位体比の分析、XRD分析による鉱物種の同定を行ったので、それらの結果について報告をする。

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