日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: J1-P-14
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J1. ジュニアセッション
皿状構造の再現と形成過程の研究
★日本地質学会ジュニアセッション優秀賞★
*東京学芸大学附属高等学校 附属高等学校
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抄録

研究者氏名:佐藤未望,鎌田唯花 神奈川県荒崎では, 皿状構造と呼ばれる稀な堆積構造がみられる。皿状構造は上方に凹の形態で, 長さ数cm〜数十cmの幅を持つ, 層理面に平行な葉理である。荒崎ではスコリア層の上部30cmに,横幅およそ5mにわたって皿状構造の連なりが見られた。それぞれの皿状構造は幅十数cmほどで, 左右両端が上方に持ち上がっていることが観察できた。辻・宮田(1997)では, 皿状構造は脱水に関連して形成された2次的な葉理であり, 未だ一般的な形成過程の定説はないと述べられている。また, 形成過程について次のような考察がなされている。まず, 地中深くの地下水が,地震が原因の液状化現象などで上昇する(以降, この上に向かう水流を浸透流と呼ぶ)。この浸透流が粒径の小さい砂で構成される水を通しづらい層(以降, 難透水層と呼ぶ)にぶつかることで,浸透流が堰き止められ水洞ができる。そして水洞の水が左右上方に抜けることで両端が持ち上がった形状ができる。水洞から完全に浸透流が抜けると, 左右両端が上方に持ち上がった変形構造, 皿状構造が形成される。馬上・和田(2020, 本校探求活動)は自作の実験装置を用いて皿状構造の形成過程の再現を行い,皿状構造の形成に成功した。それによると, 皿状構造の形成には適度な流入速度と地層の固まりが必要であるとわかっている。しかし, 再現回数が少ないこと,再現性が低いことが課題であった。本研究ではその課題の改善を目的として2種類の実験を行い, 皿状構造の形成過程の更なる解明を目指した。はじめに再現回数を増やすことを目的として,馬上・和田(2020, 本校探求活動)にて水洞の形成に成功した条件を踏まえた実験を行った(実験①)。1m長のアクリルパイプにホースを繋げたものを実験装置とし, アクリルパイプ内に砂を60cmの厚さ入れ地層を再現した。再現した地層下部に特に粒径の小さい砂からなる層を挟み,難透水層を故意的に作った。そして下から水を流入させ,浸透流を再現した。そして, この浸透流が難透水層にぶつかった時に, 再現した地層にどのような変化を与えたかを観察した。実験①では主に, 浸透流が再現した地層に何の影響も与えず, 再現した地層内の水面が上昇する現象が見られた。この現象を浸透と呼ぶ。浸透は水圧が弱いことが原因で起こる現象である。そこで, より大きい水圧で浸透流を流入させるために, 実験装置にモーターをつけて改良を施した。また, 地層を再現する容器を厚さ6cm, 幅35cm, 高さ50cmのアクリル箱に変え, 地層の広がりを再現することで再現性の向上を図った(実験②)。この実験装置を用いて, 実験①と同様の手順で実験行った。実験②では水洞の形成と崩壊の過程の観察も行った。実験②では, 皿状構造の形成に必要である水洞の形成の達成に加え, 皿状構造の形成に成功した。このことから, 実験②での水圧は水洞の形成に適していたと判断できる。そのため, 水洞の形成には適当な強さの水圧が必要であることがわかった。今後は皿状構造の形成に成功した試行を増やし, 複数個の皿状構造が形成される時には, お互いがどのように関わりあって形成されるのかについて解明したい。キーワード:皿状構造, 再現実験, 難透水層, 浸透流

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