日本地質学会学術大会講演要旨
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第131年学術大会(2024山形)
セッションID: G-P-14
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G-P.ジェネラル ポスターセッション
点群データ処理によるイルミネーション-法線マップの開発 -長野県の地すべりを例に-
*室田 真宏吉永 佑一
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抄録

1.はじめに

 近年,UAV-Lidarを用いた測量事例が増加しており,従来の航空レーザ測量に比べ,迅速かつ高密度の点群データが取得できようになった. DEMを生成するための元データである点群データから地形表現図を作成することにより,より短時間で地形判読が可能になる.このような点群データに対して,地形の凹凸を抽出できるような地形解析法の研究事例は少ない.本稿は,点群データを用いた新たな地形表現の手法を提案し,長野県の地すべり現場において本手法で作成したマップを用いた解析例を示す.

2.DEMと点群データ

 DEMはグリッド形式のデータであり,地表面に表れた地形の凹凸を捉える平面図を作成するのに適したものである.しかし,作成された図面からオーバーハングや道路構造物の張り出し等を抽出することは困難である.一方,点群データは,3次元座標をプロットしたものであり,データ密度は不均一ではあるが,地表面や側方の凹凸を正確に把握できる(表1).

3.イルミネーション-法線マップ作成法

 作成方法は,①点群データを用いた照度マップと②点群→DEM化したデータから生成した各種図面(陰影図、起伏図など)を重ね合わせて作成する.点群データの処理には, CloudCompare、DEMの処理はQGISを使用した.照度マップは,物体の表面に入射する照明エネルギーをテクスチャとする図面である.同図面を青(水)→黄(太陽)の色調で表現することで自然な視覚で地形の凹凸を抽出することができる.さらに,白黒色調の陰影図や起伏図と重ねることにより,より明確な地形表現が可能になる.本稿では,作成した図面をイルミネーション-法線マップと称す.なお,本作成法については現在特許出願中である.

4.長野県の地すべりの事例

 長野県の地すべり現場で実施されたUAV-Lidar測量結果を使用し,イルミネーション-法線マップを作成した.その結果,地すべりブロック内および周辺地形の微小な3次元形状を把握することができ,詳細な地すべりブロックの判定や3次元地盤モデル作成の精度が大きく向上した(図1).

5.今後の展望

 本研究の成果は,地形解析の精度を飛躍的に向上させ,近年積極的に導入が進められている地質の3次元モデルの精度向上に大きく貢献できるものと考える.さらに,地すべりや砂防等の災害・防災関連だけでなく,現状では草本類等に覆われた遺跡,遺構等の調査にも非常に有用であると考える.

6.謝辞

 本項を執筆するにあたり,長野県建設部砂防課をはじめとする関係各所には,多大な助言と指導を頂いた.感謝します.

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