日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
第50回日本老年医学会学術集会記録〈パネルディスカッションIII:療養病床再編の行方〉
2.療養病床再編の行方∼日本の慢性期医療施設の将来像∼
武久 洋三
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2009 年 46 巻 2 号 p. 137-140

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抄録

平成20年5月,日本慢性期医療協会(旧 日本療養病床協会)では会員医療機関を対象に,療養病床入院患者の状態及び救急医療との連携についての調査を実施した.患者の医療区分の割合は,医療区分1が25.3%を占めていたが,この医療区分1の状態には,施設での対応が可能な軽症から重度意識障害,癌ターミナル,肝不全などの重症まで,実に多種多様な病態が含まれている.また,療養病床では経管栄養37.0%,気管切開10.7%,喀痰吸引33.0%,酸素療法15.2%など,「重症度·看護必要度に係る評価票A項目」と比べても大差ないほどの重症患者を多く治療していることがわかった.現段階でも救急医療からの患者を受け入れており,今後さらに強い連携を図りたいと考えている療養病床は,全体の4分の3以上を占めている.
療養病床は従来,主に慢性期医療が必要となった患者を対象とし,適切な医療サービスを提供してきた.実際,Post Acute Therapyを十分にフォローできる機能を持つ病院は多い.急性期病院の在院日数短縮に伴い,高度慢性期医療を担う療養病床の必要性は高まりつつある.療養病床を地域医療の拠点と位置づけ,急性期医療から継続した医療を提供するとともに,在宅医療もサポートしていくという幅広いニーズに応える機能を併せもつ場となることが求められている.一般病床と同等のマンパワーを備えており,環境面の良さとともにその資源を最大限に活かすことが重要である.また,急性期の担っている機能を一部療養病床が担当することにより,医療費適正化にもつながると考えられる.療養病床は地域から必要とされ,その役割に大きな期待が寄せられている.医療は急性期病院だけでは完結しない.急性期医療の成果を活かすも殺すも,治療を継続フォローする慢性期医療の質にかかっている.急性期病院と療養病床が互いの医療機能を補完し合い,ともに地域医療を守らなければならない.

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© 2009 一般社団法人 日本老年医学会
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