2009 年 46 巻 2 号 p. 184-187
症例は79歳女性.高度の異常感覚を伴う歩行障害が出現し,1カ月後に入院.腱反射は亢進,Babinski徴候が両側でみられた.両下肢は弛緩性で対麻痺を呈し,血清抗HTLV-1抗体は陽性であった.髄液細胞数は53/μlと上昇し,成人T細胞白血病(ATL)様細胞を認めたが,髄液中の抗HTLV-1抗体は陰性であった.入院後,両下肢の筋力低下は急速に進行し,2カ月後には起立·歩行不能となった.急速進行性HTLV-1 associated myelopathy(HAM)を疑い,ステロイドパルス療法を施行したが効果なく,4カ月後に転院した.半年後に肺炎を発症し再度当院に入院.末梢血に多数のATL細胞の出現を認め,ATLと診断した.初診時にみられた急速進行性HAM類似の症状は,全身臓器への障害に先行したATL細胞の中枢神経浸潤を反映していた可能性を考えた.