抄録
橈骨動脈穿刺法により,虚血性心疾患の冠動脈インターベンション(PCI)は,超高齢者にも安全に行われるようになった.当院で,急性冠症候群発症24時間以内にPCI施行が不可能であった高齢者の院内死亡率は約20%であったが,PCIを行った80~98歳(平均85±4歳)の死亡率は7.3%で,66~79歳(平均73±4歳)は4.6%であった.高齢者の院内イベントには貧血,CRP,CK-MB最大値,多枝病変が関係した.β遮断薬,ACE阻害薬,抗血小板薬などの標準治療にて長期予後は良好で,梗塞量やeGFRが長期予後と関係した.高齢者の急性期のPCIの適応は若年者と同じでよいと考えられるが,高齢者は定型的な症状が多いため,発症時間がわかりにくい例,認知症や腎不全などでPCIができない例が問題となる.一方,高齢者の狭心症は若年者よりもPCIによる予後改善効果が見込まれる.観察研究で薬剤溶出性ステントは高齢者でもイベントを抑制したが,高齢者の急性冠症候群にはベアメタルステントが望ましい.