日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
新しいCGA initiative「Dr. SUPERMAN」開発のための認知機能評価の短縮化
大沼 剛志金高 秀和岩本 俊彦
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2012 年 49 巻 2 号 p. 241-249

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抄録

目的:高齢者総合的機能評価(CGA)は高齢者医療・介護に欠かせないものの,評価には多くの時間を必要とする.このため,CGA短縮版「Dr. SUPERMAN」の開発を試みたが,CGAの要素である認知機能の評価には時間的な制約で認知症スクリーニングテストであるMMSE(Mini-mental state examination)をそのまま用いることはできない.そこで,MMSEに先行する認知機能の評価課題を策定する目的で本研究を行った.方法:種々の疾患で外来通院中の高齢者90名(平均年齢82.5歳,男40名)を対象としてMMSE各ドメイン(1「時間の見当識」,2「場所の見当識」,3「即時記憶」,4「計算:注意力」,5「遅延再生」,6「言語機能」,7「視空間認知・構成機能」)およびエピソード記憶課題「昨日の夕食のおかずは何でしたか?」を尋ねた.MMSE総合得点から正常(24点以上),低下(23点以下)に分類し,これをゴールドスタンダードとして各ドメイン,エピソード記憶課題およびその組合せの感度,特異度,陽性反応適中率を求め,最も妥当と思われる課題の組合せを策定した.次いで,策定された組合せを高齢者50名に用いて評価時間,検者間信頼度を検討した.結果:MMSE総合得点は10~30点に分布し,正常は42名,低下は48名あった.各ドメインの感度,特異度,陽性反応適中率は,ドメイン1「時間の見当識」が68.8%,87.5%,78.6%,ドメイン2「場所の見当識」が85.4%,85.7%,87.2%,ドメイン4「計算」が89.6%,54.8%,65.2%,ドメイン5「遅延再生」が89.6%,26.2%,58.1%,エピソード記憶課題が66.7%,76.2%,76.2%であった.各課題の性質を考慮して組合せの簡便短縮化を図ると,エピソード記憶課題とドメイン1,4の課題「今年は何年」,「100から7の引き算を2回」の組合せでいずれかに異常があった場合の感度,特異度,陽性反応適中率は各々93.8%,71.4%,78.9%と高かった.また,「Dr. SUPERMAN」の中で計測された評価時間は32~55秒,評価者間一致係数κは0.861であった.結論:MMSEに先行する認知機能の評価課題には「昨日の夕食のおかずは何でしたか?」,「今年は何年」,「100から7の引き算を2回」の組合せが妥当であり,いずれかに誤・無答があればMMSEで評価すべきである.

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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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