日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
脳梗塞後に認知機能障害の急速な進行を認めた血管親和性大細胞型B細胞リンパ腫の1例
坂本 直治饗庭 三代治高橋 美妃櫻井 貴子梁 広石津田 裕士
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2012 年 49 巻 6 号 p. 783-787

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抄録
症例は67歳,男性.2006年11月頃から電灯の消し忘れなどの認知症症状が出現.2007年5月に1~2分の意識消失発作を伴う痙攣があり,再び8月にも痙攣発作を生じ他院に緊急入院した.陳旧性脳梗塞を認めたことから症候性てんかんと診断され,抗てんかん薬の投与を受け退院.退院後から急速に認知症が悪化し,12月27日に認知症疾患専門病棟へ入院となった.入院時には身体的な異常は認めず,血液検査はLDHとCRPの軽度上昇を認めるのみで,精神的には夕方を中心に周辺症状を認めた.MRIでは右頭頂葉背側部に脳梗塞病変,大脳半球深部白質のラクナ梗塞および脳萎縮を認めた.向精神薬による治療を行っていたが,2008年1月31日突然38℃台の発熱があり,その後持続した.炎症所見は軽微で,感染を疑わせる所見は認められず,血中可溶性IL-2レセプターが6,430 U/Lと上昇するのみであった.ガリウムシンチグラムでは,椎体骨,肋骨,骨盤骨,両側肺および脾臓への集積増加を認めた.リンパ系悪性腫瘍を疑ったが,表在および胸・腹部のリンパ節腫大は認めなかった.2月中旬に突然の低酸素血症,血小板減少,フィブリン分解産物上昇があり肺血栓塞栓症が疑われたが,胸部造影CTでは異常所見を認めなかった.骨髄穿刺では,リンパ系細胞の浸潤は認めず,血球貪食症候群の所見であった.2月下旬に新たな脳梗塞を発症し,経過から種々臓器の微小血管閉塞を生じる血管親和性細胞型リンパ腫の可能性が高いと考え,プレドニゾロン60 mgを投与しつつ皮膚生検を予定したが,2月25日突然病態が悪化し死亡した.剖検所見では胸・腹部の臓器の細動脈,毛細血管,細静脈の血管内にはCD20により免疫染色される大型B細胞リンパ腫の細胞が充満していた.脳病変は未確認だが,他臓器同様の病変が脳血管にも存在したことは十分に推測され,原因不明で認知症の急速な増悪を認めるときには,当疾患を疑う必要性を示唆する症例であった.
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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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