日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
90歳以上の超高齢大腿骨近位部骨折患者に対する栄養サポートチーム介入―Functional Independence Measureを用いた効果検証―
萩原 のり子井林 雪郎
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2012 年 49 巻 6 号 p. 775-782

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抄録
目的:人口の高齢化に伴い大腿骨近位部骨折患者の受傷年齢は年々高齢化しており,近年では90歳以上の超高齢患者を経験することも稀ではない.大腿骨近位部骨折の予後は高齢者ほど不良であるが,その一因として高齢者は入院中に低栄養を来たしやすく,これに関連した合併症が日常生活活動(ADL)の改善を妨げることが指摘されている.そこで,超高齢大腿骨近位部骨折患者の入院リハビリテーションにおいて,栄養サポートチーム(NST)の介入によるリハビリテーション転帰を機能的自立度評価表(FIM)を用いて後方視的に検証した.方法:対象は当院でNST導入前および導入後に入院リハビリテーションを実施した大腿骨近位部骨折患者のうち,入院時の年齢が90歳以上の栄養障害患者40例(男性3例,女性37例,平均年齢93.3±2.7歳)とした.NST導入前後の2群間でFIMを用いてADL改善度を検証するとともに,退院転帰を比較した.また,低栄養の頻度は要介護度に依存することから,入院時FIM得点が54点以下の低ADL患者に限定して同項目を比較した.結果:対象者の内訳はNST導入前18例(非NST群),NST導入後22例(NST群)であった.入院時の栄養指標はいずれも両群で有意差なかったが,FIM利得,FIM効率はNST群で有意に高く(p<0.01),退院時歩行能力もNST群で良好であった(p<0.05).入院時低ADL患者においてもNST群でFIM利得,FIM効率が有意に高く(p<0.01),退院時歩行能力も良好であった(p<0.05).非NST群では低ADL患者でリハビリテーション転帰が有意に不良であったが,NST群ではADLレベルによる有意差を認めなかった.結論:一般的に栄養不良患者は予後不良な経過を辿りやすいが,今回の研究ではNSTの介入によりリハビリテーション効果や歩行能力に有意な改善がみられており,NSTによる多職種介入の有効性を示唆する結果と考えられた.また,入院時のADLが低い高齢患者においても,適切な栄養管理により有意な改善が期待できると考えられた.
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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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