日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
大都市圏における在宅医療患者の退院後30日以内の再入院に影響する医療施設要因
光武 誠吾石崎 達郎寺本 千恵土屋 瑠見子清水 沙友里井藤 英喜
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2018 年 55 巻 4 号 p. 612-623

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抄録

目的:高齢の在宅医療患者にとって,退院直後の再入院は療養環境の急激な変化を伴うことから心身への負担は大きく,有害事象の発生リスクも高めるため,再入院の予防は重要である.退院直後の再入院の発生と個人要因との関連を検討した研究は多いが,医療施設要因との関連を検討した研究は少ない.本研究は,在宅医療の提供体制の観点から退院直後の再入院予防策を検討するため,東京都後期高齢者医療広域連合から提供を受けたレセプトデータを用いて,在宅医療患者の退院後30日以内の再入院に関連する個人要因及び医療施設要因を明らかにする.方法:分析対象者は,在宅医療患者のうち,平成25年9月~平成26年7月に入院し,退院後に入院前と同じ施設から在宅医療を受けた7,213名(平均年齢87.0±6.0歳,女性:69.5%)である.退院後30日以内の再入院に関連する個人要因及び医療施設要因(入院受入れ施設の病床数,在宅医療提供施設の病診区分及び在宅療養支援診療所/在宅療養支援病院「在支診/在支病」であるか否か等)を一般化推定方程式(応答変数:二項分布,リンク関数:ロジット)で分析した.結果:退院後30日以内に再入院した患者の割合は11.2%であった.一般化推定方程式の結果,退院後30日以内の再入院ありと関連したのは,男性,悪性新生物,緊急入院利用であった.医療施設要因では,在宅医療提供施設が在支診/在支病の場合(調整済オッズ比:0.205,p値<0.001),診療所を基準にすると入院医療施設が200床以上の病院(調整済オッズ比:0.447,p値<0.001)で再入院抑制と関連していた.結論:在支診/在支病のような24時間対応可能な在宅医療の提供体制は,退院直後の再入院を抑制する要因(往診など)を包含している可能性が示唆された.在支診/在支病による訪問診療が再入院抑制に働く機序を明らかにする必要がある.

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© 2018 一般社団法人 日本老年医学会
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