日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
入院・通院高齢者の「化粧」および「化粧療法」に関する専門職の意識一医療機関に勤務する高齢者ケア専門職への調査から
作田 妙子守谷 恵未大野 友久山田 広子岩田 美緒角 保徳
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2019 年 56 巻 3 号 p. 323-330

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抄録

目的:化粧療法は要介護高齢者や認知症患者に対して実施されているが,現場のニーズについての報告はない.本研究では医療従事者を対象に,高齢者の化粧療法に関する現状を把握することを目的とし質問紙を用いて調査を実施した.方法:A県下高齢者専門医療機関(職員数548名)に勤務する化粧が業務に影響すると考えられる医療従事者190名を対象に自記式質問紙法による調査を実施した.職種,性別,年齢について調査し,看護師は病棟勤務看護師を対象とし配属病棟の調査も実施した.高齢者における化粧療法の認識と容認できる化粧内容について質問した.対象者全体での検討以外に,看護師と療法士間,看護師の従事病棟別,性別ごとにも検討を加えた.結果:質問紙は121名から回収した(平均年齢33.3±9.4歳 男性42名 回収率63.7%).看護師55名,理学療法士25名などの職種となった.化粧は気分を良くし生活の質が向上すると考えている者がほとんどだが,化粧療法を初めて知った者が多かった.化粧療法をやってみたい者は全体の半数で看護師や女性はやや多かった.外来患者はほとんどの化粧内容が容認でき,入院患者はスキンケア以外の容認率が低かった.看護師,療法士間で比較したところ,入院患者のファンデーション,アイメイク,頬紅で看護師の容認率が低かった.女性で化粧療法をやってみたいと考える者が有意に多く,入院患者のファンデーションおよび頬紅の容認率が有意に低かった.従事する病棟別では,回復期リハビリテーション病棟では化粧療法をやってみたいと思う者が多く,各化粧内容の容認率が全体的に高い傾向があったが,有意差は認めなかった.結論:化粧療法は生活の質改善に効果があると考えながらも,実施したいという者は半数であった.また,化粧内容により容認率に差があった.化粧療法の現状を把握でき,その普及に資するデータが得られた.

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© 2019 一般社団法人 日本老年医学会
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