日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
音波による全身振動刺激が高齢者の気分,自律神経系機能,脳機能に及ぼす影響について
崔 元哲水上 勝義
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 57 巻 4 号 p. 441-449

詳細
抄録

目的:高齢者の心身の健康増進に運動が奨励されているが,運動実施が困難な高齢者も少なくない.音波による全身振動刺激(Sonic Wave Vibration,以下SWVと略す)は,振動板の上で一定時間立位を保持することで,歩行や下肢筋力への効果が報告されている.本研究は,SWVの気分,認知機能,自律神経機能,安静時エネルギー消費量に対する効果を明らかにすることを目的とした.方法:24名の後期高齢者(平均年齢88.0±5.0歳)をSWV実施群と対照群に無作為割り付けし,SWV群は1日10分,週5日,2カ月間SWVを実施し,測定結果を対照群と比較した.結果:SWV直後に,二次元気分尺度において,安定度・快適度は有意に上昇し,同時に測定した心拍変動では副交感神経活動の指標が有意に上昇し,交感神経活動の指標が有意に低下した.また安静時エネルギー消費量は有意に増加した.2カ月後SWV群は,ストループBの遂行時間が有意に短縮し処理速度の向上が認められた.またストループ課題実施時の酸素化ヘモグロビン濃度と総ヘモグロビン濃度はSWV群に有意に上昇した.期間中特に有害事象は認めなかった.結論:SWVは高齢者に安全に実施可能なこと,実施直後に気分やストレス改善効果が得られること,継続的に実施することで認知機能や脳機能に影響する可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top