日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
ロシアの寒冷地域在住高齢者の飲酒量と睡眠の関係:横断研究
Georg von Fingerhut荒木 章裕岡本 紀子高尾 敏文Konstantin MakarovYuriy KimElena KondyurinaLyudmila Yakovleva巻 直樹丁 剣洋
著者情報
キーワード: 飲酒, ロシア, 高齢者, 睡眠
ジャーナル フリー

2020 年 57 巻 4 号 p. 458-466

詳細
抄録

目的:ロシアの寒冷地域は飲酒量が多く,睡眠の質の低下や心身の健康問題との関連性が指摘されてきた.しかし,現状ではその実態に関する報告が少なく,保健指導上の指針となる飲酒の適量が示されていない.本研究は,ロシアのシベリア地域に在住する高齢者の飲酒量(純アルコール量に換算)と睡眠の関係について,その実態と飲酒量に関連する要因を検討することを目的とした.方法:シベリアの中心的都市であるノボシビルスク市在住の60歳以上の高齢者422人に自記式質問紙調査を行った.質問項目は,基本属性,健康状態,飲酒習慣,Short Form-8 Health Survey,Geriatric Depression ScaleとPittsburgh Sleep Quality Indexとした.飲酒習慣のある高齢者を対象とし,1日当たりの飲酒量を純アルコール量に換算し,その中央値(32 g)を基準とした2群の比較,および飲酒量の多い群の関連要因についてロジスティック回帰分析を実施した.結果:質問紙調査の有効回答数は416人(98.9%)であり,そのうち飲酒習慣のある293人について,純アルコール量(摂取量≧32 g/日)を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.その結果,性別(OR=0.586;95%CI:0.345~0.995),教育年数(OR=1.538;95%CI:1.239~1.910),不眠(OR=2.442;95%CI:1.185~5.032),アルコール摂取の理由がより良い睡眠のため(OR=4.120;95%CI:1.044~16.258),飲酒による影響・夜間中途覚醒(OR=2.586;95%CI:1.317~5.077),飲酒による影響・家族からの注意(OR=26.938;95%CI:3.368~215.431)の項目に有意な関連性を認めた.結論:ロシアの寒冷地域の高齢者においては,飲酒量の多さは睡眠の質を低下させる可能性があり,適切な純アルコール量の基準設定および健康教育の必要性が示唆された.

著者関連情報
© 2020 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top