日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
身体機能,精神機能,認知機能,口腔機能,併存疾患による地域在住高齢者の類型化と転倒経験との関連
美﨑 定也村山 洋史杉山 美香稲垣 宏樹岡村 毅宇良 千秋宮前 史子枝広 あや子本川 佳子粟田 主一
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2023 年 60 巻 4 号 p. 364-372

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抄録

緒言:高齢者の転倒を予防するためには,高齢者の状態像を多角的に捉える必要がある.本研究の目的は,地域在住高齢者を身体機能,精神機能,認知機能,口腔機能および併存疾患を基にクラスター分析により類型化し,分類した群と転倒経験との関連を検討することとした.方法:2015年に東京都A区において実施された,介護予防に関する調査のデータを用いた.対象者は,要介護認定を受けていない65歳以上の地域在住高齢者132,005名であった.調査項目は,身体機能,精神機能,認知機能,口腔機能,併存疾患数,過去1年以内の転倒経験等であった.解析は,クラスター分析を行った後,分類した群を独立変数,転倒経験を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.結果:78,917名(59.8%)から回答を得て,70,746名(53.6%)を最終的な解析対象とした.平均年齢は73.6±6.0歳,男性が44.9%であった.クラスター分析により,全体良好群(37,797名;53.4%),メンタルヘルス不良群(10,366名;14.7%),身体機能中程度不良群(13,461名;19.0%),全体不良群(9,122名;12.9%)の4群に分類した.社会人口学的変数,健康行動関連変数,転倒不安感で調整したロジスティック回帰分析の結果,全体良好群を参照とした場合の転倒経験のオッズ比は,メンタルヘルス不良群で1.44(95%信頼区間:1.34~1.53),身体機能中程度不良群で1.54(1.44~1.65),全体不良群で2.52(2.34~2.71)であった.結論:転倒のリスク因子である身体機能,精神機能,認知機能,口腔機能,併存疾患により地域在住高齢者を特徴的な4群に類型化することができた.転倒しやすさも異なることから,転倒予防対策はこうした類型化を基に考えていくことが有効と示唆された.

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© 2023 一般社団法人 日本老年医学会
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