日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
Centrophenoxine のリポフスチン除去作用について
朝長 正徳泉山 七生貴亀山 正邦
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1978 年 15 巻 4 号 p. 355-361

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抄録

リポフスチンは加齢と共に細胞内に蓄積する. 特に生後分裂の行われない神経細胞や心筋では老化とともに著しく増加することが知られている. Nandy & Bourne ら (1966) は, セントロフェノキシンにモルモット神経細胞のリポフスチンを除去する作用のあることを報告した. 本研究では, 主として電顕的にセントロフェノキシンのリポフスチンに対する作用を検討した.
方法: 動物はモルモットを用い, 6カ月齢 (若年群) 6匹, 2年齢 (老年群) 8匹, 計14匹である. 老年群の5匹に対し centrophenoxine (dimethylaminoethyl-p-chlorophenoxy-acetate,‘Lucidril’) 20mg/ml溶液を用い, 80mg/kgの割合で, 毎日腹腔内注射を行った. 老齢群の残り3匹および若年群6匹には生理的食塩水を腹腔内に注射した. 注射開始後90日および127日で断頭し検索に供した. 脳, 心臓, 肝臓その他の臓器および骨格筋を採取し, 光顕および電顕標本を作製した. 脳の電顕標本は視床下部, アンモン角, 脊髄より作製した.
結果: 1) 光顕的にはセントロフェノキシン処理老齢群の神経細胞内リポフスチン量は対照との間に差がみとめられなかった. 2) 電顕的には, 視床下部, 脊髄前角細胞, 心筋のリポフスチンの空泡形成がみられたが, 対照群でも同様の変化がみられ, セントロフェノキシンによる本質的な変化とは考えられなかった. 3)一方, セントロフェノキシン投与群では, リポフスチン分布の凝集型より分散型への傾向がみとめられた. 4)また, リポフスチン構造の電子密度の高い部分に比して明るい部分の比率が減少していた. 5) セントロフェノキシン投与群では, rERの増加が観察された.
結論: 2年齢の老モルモットではセントロフェノキシンによる神経細胞内リポフスチンの消失, 空泡化は明らかではなかったが, リポフスチンの構造および分布上の変化がみとめられ, これは本薬物による神経細胞の代謝への何らかの関与による二次的変化と考えられる.

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