日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
虚血性心疾患におけるイソプロテレノール負荷 mapping 法
特に ST Map について
岩崎 勤蔵本 築松下 哲萬木 信人加藤 洋一植山 千秋村上 元孝村山 正博
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1981 年 18 巻 1 号 p. 25-32

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抄録
老年者虚血性心疾患で虚血の程度とその範囲を検討するため, イソプロテレノール (ISP) 負荷を行い, その前後の ST-Map を比較し, ISP負荷 mapping 法の有用性について考察を加えた.
虚血性心疾患15例と高血圧, 左脚ブロックなど5例 (コントロール) においてISP 0.02μg/kg/minを5分間静注した. 負荷前後で, 胸壁及び背部における87電極から作成した心臓電位図 (Map) を作成した. 心電図のJ点より20msの時点のST部分を ST-Map とした.
結果: 虚血性心疾患において正中線から左腋窩まで広範囲の陰性化がISP負荷後認められた. この陰性は負荷2分で軽度出現し, 5分で拡大増強した. 著明な陰性化を示した1例でISP負荷後のTl-201心筋スキャンで欠損が認められた. 負荷前後のSTの差より求めた図 (ST-Departure Map) ではSTの変化が直接観察できた. この図で最大ST陰性値の部位は15例中6例で通常の12誘導心電図の電極の位置と一致したが, V3, V4, V5より約1肋間上に6例で認められた. 最大ST低下値はΣST低下とr=0.90の相関を示し, V5のST低下値とΣST低下の相関 (r=0.7) より大であった. コントロール群ではST低下はその範囲が小さく, 虚血性心疾患と差を示した. 以上よりISP前後の多数電極による ST-Map を比較し, 12誘導心雷図では得られない種々の情報が得られることが判明した.
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