日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老化性痴呆のCTスキャンによる脳萎縮の臨床的意義
今井 幸充本間 昭芦田 浩長谷川 和夫
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1981 年 18 巻 6 号 p. 441-449

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抄録
初老期痴呆および老年痴呆と診断された80名を対象に, CTスキャン上の脳萎縮と知的機能低下および痴呆の程度との関連を明らかにすることを本研究で試みた.
CTスキャン上の脳萎縮の評価は, CTの画像データから application computer を用いて処理し, 頭蓋内腔面積に対する脳髄液腔面積の占る割合い (脳髄液腔面積比) を算出しておこなった. 対象とした画像データは, 側脳室前角・後角を通るスライスと側脳室体部を通るスライス, および脳実質のみを通り頭蓋腔総面積が60cm2から80cm2の3枚のスライスを選んだ.
老化性痴呆の知的機能の評価として, 長谷川式簡易痴呆スケール, Bender Gestalt test, コース立方体組合せテストを施行した. これらの心理テスト得点と脳髄液腔面積比との相関を求めた. また, 金子の痴呆の程度の分類に従がい80名の患者を, 高度, 中等度, 軽度痴呆群に分け, 各群における脳髄液腔面積比の平均値の比較, また各心理テスト得点の平均値の比較をおこなった.
結果は, 側脳室レベルの2枚の画像データから求めた脳髄液腔面積比と, 長谷川式簡易痴呆スケール, コース立方体組み合せテスト得点との間に有意な相関が得られたが, すべてが決して高い相関係数ではなかった. また, 痴呆の程度と脳髄液腔面積比とは, 痴呆が進むに従がい脳髄液腔面積比が増大する傾向を示したが, 推計学的にはほとんど有意差は得られなかった. しかし, 痴呆の程度と各心理テスト得点間には有意差が得られた.
よって, CTスキャンは老化性痴呆患者のスクリーニング検査として有用であるが, CT上の脳萎縮と知的機能低下および痴呆の程度との間には, 厳密な関連はみられないことが示された.
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© 社団法人 日本老年医学会
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