老年者リンパ球では, T cell を刺激するとされているPHAおよび Con-Aに対する幼若化反応が, 低値を示すとする報告が多い. しかし, B cell の幼若化反応については十分検索されていない. 我々は70歳以上の老年者リンパ球について, PHAおよび Con-A刺激下に, 種々の時間培養し, その幼若化反応を調べた. 次に, PWMおよび Staphylococcus aureus Cowan I株菌体を用いて, 老年者B cell の幼若化能についても検索した.
末梢血リンパ球をPHA, Con-AおよびPWMで刺激して, 24時間から8日間培養し,
3H-uridine および
3H-thymidine の取り込みを測定した. 老年者ではPHAおよび Con-Aに対する幼若化反応は有意の低値を示した. しかし, PWMに対する幼若化反応は, 老年者と若年者で, 有意差がなかった. 次に, B cell の幼若化能を検索するために, ノイラミニダーゼ処理羊赤血球との rosette 形成により, T cell とB cell を分離し, T cell をマイトマイシン (MMC) で処理して, MMC処理T cell+B cell をPWM刺激下に4日間培養し,
3H-thymidine の取り込みを測定した. 若年者MMC処理T cell+若年者B cell と比較して, 若年者MMC処理T cell+老年者B cell では有意の低値を示した. また, 老年者MMC処理T cell+若年者B cell と比較して, 老年者MMC処理T cell+老年者B cell でも有意の低値を示した. 末梢血リンパ球を, B cell のみを刺激するとされている Staphylococcus aureus Cowan I株菌体で刺激して, 4日間培養し,
3H-thymidine の取り込みを測定した. 老年者リンパ球は若年者リンパ球と比較して有意の低値を示した. 今回の検索で, B cell 分画にはB cell と monocyte が含まれているため, 老年者では, B cell 自身の機能障害あるいは monocyte の障害があると考えられる. 以上, mitogen に対する幼若化反応の検索より, 考年者では,T cell の機能障害の他に, B cell あるいは monocyte にも機能障害があると示唆された.
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