日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者における内視鏡的逆行性膵管造影時の血清酵素・Ht値の変動と合併症について
早川 富博宮治 真片桐 健二岸本 高比古友松 武山本 俊幸前田 甲子郎伊藤 誠武内 俊彦
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1982 年 19 巻 6 号 p. 596-602

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抄録

高齢者45例 (平均年齢76歳) における内視鏡的逆行性膵管造影施行時の白血球数, Benz-Arg-PNA水解酵素活性 (以下T.L.E.と略す). 血清アミラーゼ値の変化を壮年者26例 (平均年齢42歳)と比較検討し, また高齢者の検査によるHt値の変化についても検討し考察を加えた. 白血球数, T.L.E.活性は検査によって軽度の上昇を示したが, 高齢者群と壮年者群との間に差はなかった. 血清アミラーゼ値は両群とも検査2時間後に有意な上昇を示したが, 高齢者群では壮年者群に比して約1/3の値であった. また, 血清アミラーゼ値の上昇率と主膵管径との間に逆相関(n=68, r=0.361, P<0.01) が得られた. これより高齢者では十分な膵管像が得られ易いと考えられた. しかし高齢者群では前値に復するのが壮年者群に比して還延しており, 検査後の十分な観察が必要と考えられた.
高齢者群におけるHt値は検査によって有意の上昇を示し, 血液粘性の上昇が示唆された. 検査時間が50分におよんだ為に頻回な空気の吐逆を起こし, mallory-Weiss 症候群を合併した症例を呈示した.
高齢者の内視鏡的逆行性膵管造影施行時には壮年者に比して注意すべき点が多いが, 検査前から被験者の状態把握, 十分な補液と経過観察, 検査時間の短縮などを考慮すれば, 診断に適した十分な膵管像が得られると考えられた.

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