日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
加齢に伴う膵外分泌機能の変動にかんする研究
富名腰 徹松本 雅裕今村 浩一郎牟田 和男牧 俊夫若杉 英之井林 博
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1982 年 19 巻 6 号 p. 617-624

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抄録

加齢に伴う膵外分泌能の変動について, 健常者323例を対象に, 早朝空腹時の血清RNase (polyC基質法), 血清 elastase 1 (RIA), アミラーゼ値を測定し, また pancreozymin secretin test (PS 試験) 施行の372例を健常者を対象に各年齢別検討を加えた. なお, 血漿 Human pancreatic polypeptide (hPP) の変動についても検討した. 対象症例の年齢は15~116歳で, 以下の成績を得た.
1) 血清RNase値は加齢と伴に有意の漸増を認め (r=0.61, p<0.001) 特に70歳以降に著明な上昇向を示したが, 特に有意の性差を認めない.
2) 血漿hPP値も加齢と伴に有意の漸増を示し特に80歳以上の高齢者で著明高値例を認めるが, 老年者では個体別変動が大であった. なお, 血清RNaseとhPP間には有意の正相関が認められた (r=0.44, p<0.001).
3) 血清 elastase 1は加齢に伴う有意の変動を認めえなかった.
4) 血清アミラーゼ値は70歳代でやや低値傾向を示したが, 各年代間に有意の変動は認めえなかった.
5) PS試験では, 指標3因子中液量とアミラーゼ排出量は10歳代と70歳代でやや低値傾向を認めたが, 最高重炭酸濃度を含め, 3因子ともにいずれも加齢による有意の変動を認めえなかった.
従ってこれら諸検査項目の中で特に血清RNase及び血漿hPP値の判定に際して年齢への配慮が必要と結論される.

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