抄録
老人及び老齢ラットでは肝ミトコンドリアの数の減少と増容が存在する. 実際に老齢ラットから肝ミトコンドリアを調整して酸化的リン酸化能を測定してみると, 若齢ラットのものと同じであるとの報告がある. しかし, stress 負荷を加えた場合には機能が低下する可能性を示唆する成績があるので, その点を詳細に検討した. 即ち, 725日齢の老齢ラット, 10日齢の若齢ラットの肝ミトコンドリアを分離して30分間室温にて aging すると, 若齢ラットではADP/O, respiratory control ratio (RCR) が軽度低下するのみであったが, 老齢ラットではいずれも著明に低下した. また脱共役剤であるトルブタマイドを経口投与して4時間後に断頭屠殺し, 肝ミトコンドリアを調整しADP/O, RCRを測定してみると, 老齢ラットでは明白にADP/O, RCRの低下が認められたが, 70日齢のラットでは全く無影響であった. また無処置の老齢, 若齢ラットの肝ミトコンドリアに in vitro で各種濃度のトルブタマイドあるいはCa++を加えたところ, 老齢ラット肝ミトコンドリアでは若齢ラットに比していずれの場合にも有意にADP/O, RCRが低下した. 以上の成績から老齢ラット肝ミトコンドリアは種々の障害因子に対する抵抗性が減弱していることが示唆された.