日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
50歳以後に発病する重症筋無力症
50歳未満発病例との比較
森松 光紀小松 美鳥平井 俊策岡本 幸市江藤 文夫
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1983 年 20 巻 5 号 p. 376-384

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抄録
重症筋無力症 (MG) を有する群馬大学神経内科症例48例および東大老人科症例6例, 計54例を高年 (50歳以上) 発病群 (14例) と若年 (50歳未満) 発病群 (30例) とに分けて比較し, 以下の成績をえた.
1) 群大神経内科症例の発病年齢は男性は50歳代, 女性は10~30歳代にピークがあり, 高年発病者数は男7例 (男性例中50%), 女4例 (女性例中12%) であった. この年齢分布は本邦の各報告よりもむしろ欧米の統計 (Schwab ら, Osserman ら) に近く, 本邦でも注意深く調べれば高年発病の男性例がより多く発見される可能性を示した.
2) 初発症状, 初診時の重症度, および初診より1年以上経過後の重症度について, 高年および若年発病群の両者の間で有意差は認められなかった. 追跡時の死亡数は高年発病群により多いが有意差はなく, 高年発病のMGの予後が悪いとはいえなかった.
3) 血清抗アセチルコリン受容体抗体価を高年発病9例, 若年発病24例で測定したが, 10nMol/l以下の比較的低値を示す患者は高年発病群に有意に多かった.
4) 胸腺の性状を気縦隔造影, 胸部CT, 手術ないし剖検によって判定したが, 肥大または残存型胸腺を示す症例数は高年発病群25%, 若年発病群65%で前者に有意に少なかった. 即ち, 胸腺腫を除けば高年発病者では胸腺はMG発生に重要な役割を果さぬことが示唆された.
5) 高年発病の3例を示した. 症例1. 男性. 78歳発病. 9カ月の経過でステロイド治療中に死亡した. 剖検上, 胸腺の残存を認めなかった. 症例2. 男性. 52歳発病. 胸腺腫摘出後も症状は不安定で, 9年の経過で喉頭癌のため死亡した. 剖検で胸腺の残存を認めなかった. 症例3. 男性. 60歳発病. Osserman IIA. 気縦隔造影で肥大・残存型胸腺を認めた. 手術は行われなかった.
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