日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
血液の超微弱発光
後藤 由夫
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1984 年 21 巻 2 号 p. 71-78

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抄録
肉眼視できる最も少ない光量の100万分の一ほどの極く弱い光を検出する装置が開発され,その医学分野への応用も可能になった. このような弱い光では光子の流れは不連続で計測結果は電流としてではなく, 単位時間当りの光子数として表わされる.
微弱な発光としては, 古くからホタルなどの luciferin-luciferase 反応によるものや, 発光蛋白質の分解により発光する生物種などが知られ, 生物発光と呼ばれている. 他方, luminol に代表される化学発光がある. 両者は励起分子が発光する点において同一である.
この化学発光に属するものに一重項酸素の発光がある. 即ち, 励起状態の活性酸素である一重項酸素が基底状態の三重項酸素に遷移する時に光子を放出する. この性質を利用し生体試料中での一重項酸素の存在を知ることができる. ただし, 他にも発光種はあるので注意を要する.
生体試料中での一重項酸素などによる発光は肉眼視できぬ極く微弱なもので極微弱発光と呼ぼれ, その中でも血液の発光のように極端に弱い発光を超微弱発光と称している.
われわれは人の血液の超微弱発光の計測を行ない, 主として血漿に関して, 糖尿病や諸肝疾患で発光量が高いことを認めた. scavenger や発光スペクトルの分析からこれらの発光に一重項酸素の関与が示唆された.
正常人でも喫煙すると血液の超微弱発光が増加することが見い出された. この現象は禁煙により消失することも判明した. また, タバコの煙自体も強い超微弱発光を示し, 一重項酸素がその発光に関与すると推察された.
free radical や活性酸素は老化や疾患と関連して注目されているが, 臨床的には扱いにくい. その中で一重項酸素を超微弱発光として把える手段は有用であり, その実用例を紹介した.
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