日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
温水浴における血漿カテコラミンの変動
正常血圧若年者と正常血圧老年者の比較検討
田島 郁文笠原 浩一郎野口 寿一堀越 幸男五十嵐 秀夫乾 迪雄
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1984 年 21 巻 4 号 p. 361-367

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抄録

片麻痺の治療やリハビリテーションに, 増々適応をひろげている温水浴について, その心臓血管系や自律神経機能に及ぼす影響について検討した. 従来, 入浴における交感神経活動の報告は, 厳密には入浴前と出浴後の比較であり, 本研究の如く受動的な入浴中の検討は行われていない. 即ち, 69~83歳の老年者7例, 23~31歳の若年者5例について, ハバード浴10分間の入浴前, 中, 後の心拍数, 血圧, 血漿カテコラミンを経時的に追跡した. その結果, 老年者群, 若年者群共に42℃入浴中, 有意な心拍数の増加を認め, この変化は38℃入浴時より有意に大であった. 又両温度共に若年者群の変化が有意に大であった. 両群共に, 両温度において入浴中平均血圧の有意な低下を認めたが, その程度には, 水温, 年齢による差はなかった. 又, 出浴に伴う平均血圧の上昇は, 両群共に38℃で有意であった. 血漿ノルエピネフリンは, 若年者, 老年者群共に入浴中は減少の傾向にあるも変化はなく, 出浴で上昇する. その変動は平均血圧の変動と相関を示した. 末梢血管拡張剤の急性投与にみられる血圧降下には, 反射性交感神経緊張が随伴して血漿カテコラミンの上昇を認めるが, 温水浴に対する生体の反応はそれと異なるものである.

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© 社団法人 日本老年医学会
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