日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
Alzheimer 病における染色体の異数性
池田 俊美
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1985 年 22 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

臨床的に Alzheimer 病と診断された患者13例 (平均年齢: 55.4歳), 対照として知能障害を認めない12名の健常者 (同上: 51.4歳), さらに, Alzheimer 型老年痴呆患者6例 (同上: 83.5歳) と高齢の健常対照者4名 (同上: 85.2歳) について染色体検査を実施した.
染色体標本は被検者の末梢血を全血培養して作製した. 標本を検鏡し, 異数性細胞の出現頻度を調べ, 同細胞の核型分析を行った. 異数性細胞の出現頻度 (%) は, 各被検者の分裂中期細胞50個あたりに検出された高二倍性細胞 (染色体数が47および48) と低二倍性細胞 (同上が44および45) の合計で求められた.
異数性細胞の出現頻度は, Alzheimer 病患者群では平均で18.0%, 同年齢の健常者群では平均3.5%で, 統計学的に明らかな差が認められた (p<0.01). 一方, Alzheimer 型老年痴呆患者群は平均で12.6%の異数性細胞の出現頻度を示し, 同年齢の高齢健常者群の出現頻度10.5%とは有意差が認められなかった (p=0.1). また, Alzheimer 病患者群と Alzheimer 型老年痴呆患者群の異数性細胞の出現頻度を比較したところ, Alzheimer 病患者群はその年齢がはるかに若いにもかかわらず, 出現頻度は明らかに高率であった (p<0.01).
以上から, 異数性細胞の出現頻度に関するかぎり, Alzheimer 病患者群と Alzheimer 型老年痴呆患者群とでは, 頻度の程度に相異があることが認められた. 核型分析の結果, Alzheimer 病患者群および Alzheimer 型老年痴呆患者群で高二倍性および低二倍性を示した染色体はC-X群に多かった. さらに, Alzheimer 病患者と健常者のリンパ球と血清を交換培養し, 異数性細胞の出現頻度を求めた結果, Alzheimer 病患者群における異数性細胞の出現頻度の増加は, 血清と無関係であり, 患者リンパ球自体に原因を求めるべきであることが示唆された.

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