日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者に見られた Progressive Subcortical Vascular Encephalopathy (Binswanger 型) の臨床病理学的検討
特に病型分類について
木谷 光博朝長 正徳吉村 正博森 秀生山之内 博
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1986 年 23 巻 2 号 p. 155-162

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抄録

いわゆる Binswanger 病と同様の病理所見を示す progrsssive subcortical vascular encephalopathy (PSVE) が, 老人において決して稀な疾患ではない事をすでに報告した. 今回我々は, 東京都養育院付属病院における昭和52年-昭和58年の老人連続剖検例1,500例のうち病理学的にPSVEの所見を示した73例を対象とし高齢者PSVEの特徴について検討した.
脱髄・梗塞の程度を, 軽度 (1点)-重度 (3点) に点数化し, 前方脳葉群 (F+P), 後方脳葉群 (T+O) の点数により病型分類を行った. F+P>T+Oを前方優位型 (A型:男16例, 女9例, 平均年齢81歳), F+P<T+Oを後方優位型 (P型: 男5例, 女1例, 平均年齢85歳), F+P=T+Oを広汎型 (D型: 男26例, 女16例, 平均年齢82歳) とした. その結果, 1) 白質小血管肥厚と, 脱髄・梗塞の程度に関連が見られた. 2) Binswanger により報告されたP型は少なく, 前頭葉になんらかの障害があるA型, D型が多かった. 3) A型は, 他の型に比較すると白質小血管の肥厚度は軽度であった. 4) 臨床的には, これらの3型に特異的な症状の差はなかった. 5) A型, D型に老年性変化多発例が10%に見られた.
以上より, 本症の原因として白質小血管の肥厚が重要であると考えられた. しかし, 高齢者PSVEにおける特異的なA型は他型に比較し血管肥厚度が軽度なものが多く, 全身状態の関与が重要であるとおもわれた.

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