日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
久山町住民に見られた食品, 嗜好物の摂取頻度とその生命予後に対する影響
II. 15年間の生命予後, 脳卒中発症, 悪性新生物死
廣田 安夫竹下 節子竹下 司恭上田 一雄尾前 照雄勝木 司馬之助
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1986 年 23 巻 2 号 p. 163-171

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抄録

久山町住民1,609名 (40-69歳) の食品・嗜好物摂取頻度を調査した後, 15年間の生命予後との関係を検討した. この間の死亡者は309名 (男181名, 女128名) であった. 先ず, 男女別に15年間の生存曲線を Logrank test で比較すると, 女は男より生存率は約10%高かった (Chi-square=30.12, p<0.0001). 生命予後に対する影響はCoxの比例ハザード・モデルを使用して検討したが, 全体では加齢, 男性, 喫煙習慣, 漬物類摂取頻度の4項目が有意に生命予後不良の影響を有していた (p<0.05). この関係には性差があり, 男のみでは更に肉類摂取頻度が有意となり, 女のみでは加齢以外には有意の因子は認めなかった. 漬物類, 肉類は何れも摂取頻度の少ない事が不良であった. 対象者の中の1,378名 (男595名, 女783名) は同年実施した検診成績から Body Mass Index (体重(kg)/身長(m)2), 収縮期血圧, 拡張期血圧, 血清蛋白及び血清総コレステロールの計測値が得られたのでこれらを追加して同様に解析すると, 加齢, 収縮期血圧, 喫煙, 男性が有意であり (p<0.05), 血清総コレステロール及び血清蛋白の意義は小であった. 男のみでは, 加齢, 収縮期血圧, BMI, 喫煙習慣が有意であった (p<0.05) のに対し, 女では加齢と収縮期血圧のみが有意であった. BMIから男の軽度の肥満は必ずしも生命予後の不良を意味しなかった.
久山町追跡調査対象者として発症および死亡時の剖検により詳細に調査し得た1,111名から111名の新しい初回脳血管障害発症を見たが, 食品・嗜好物のみでは加齢と飲酒習慣が有意な危険因子であり, 検診項目を加えた場合 (68名/1,012名) には, 収縮期血圧, 男性, 加齢が有意となり, 飲酒は高血圧を介して脳血管障害発症に影響するものと推測できた. 同様に, 悪性新生物死59名では全ての分析を通じて, 取り上げた因子中喫煙習慣の影響が最も著しい事を明かにした.

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