日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
本態性高血圧に対するカルシウム拮抗薬の年齢別有用性
Nicardipine二重盲検試験の検討
蔵本 築山田 和生宮下 英夫
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1986 年 23 巻 2 号 p. 180-188

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抄録

本態性高血圧に対するカルシウム拮抗薬の有用性の年齢的差異を検討するため, nicardipine について実施された単独投与および利尿薬併用投与の二重盲検試験成績を年齢別に比較検討した. 単独投与群の対象は82例で, 49歳未満の若年者16例 (平均43.2歳), 50歳代の壮年者31例 (平均54.0歳), 60歳以上の老年者35例 (平均66.1歳) であり, 利尿薬併用投与群の対象は63例で, 59歳以下の壮年者38例(平均50.3歳) および60歳以上の老年者25例 (平均66.1歳) であった.
降圧効果 (20/10mmHgまたは平均血圧13mmHg以上下降) は nicardipine 単独投与群では若年者43.8%, 壮年者63.3%, 老年者66.7%, 併用投与群では壮年者71.1%, 老年者68.0%に認められ, いずれも各年齢者間には有意の差はみられなかった. 観察期の血圧と降圧度は正の相関を示したが, 年齢と降圧度の間には有意の相関は見られなかった. 平均の降圧幅は単独投与で19~24/10~13mmHg, 併用群で20~25/14~15mmHgといずれも有意の低下を示したが, 各年齢者間に差を認めなかった. 心拍数は単独, 併用投与ともほとんど変化を示さなかった.
副作用は, 単独投与群の若年者では0%, 壮年者で25.8%, 老年者で14.3%に認められ, 若年者と壮年者の間に有意差を認めたが, 老年者とは差を認めなかった. 併用投与群では, 壮年者13.2%, 老年者12.0%に認められたが壮年者, 老年者間に有意の差は認められなかった.
有用度においても, 単独投与群で若年者56.3%, 壮年者58.2%, 老年者65.7%, 併用投与群では壮年者65.8%, 老年者60.0%が有用またはきわめて有用と判定されたが, 各年齢者間に有意の差は認められなかった. また各年齢者とも動脈硬化危険因子を増加させるような代謝的作用は見られなかった. 以上よりカルシウム拮抗薬 nicardipine は老年者の本態性高血圧に若年者, 壮年者と同様に有用な薬剤と考えられた.

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