抄録
抗生物質の投与によって発症する偽膜性大腸炎の発生機序を解明する目的で, 水素ガスクリアランス法を用いて本症患者5例の直腸粘膜血流を測定した. その結果, 本症の活動期には血流は著しく低下しており, 治療とともに血流も改善する傾向が確認された. 本症にみられた血流低下の減少はその発生原因であるのか, 偽膜形成の結果であるのかは明確ではないが, 本症は高齢者に好発することも合せて考えると, その発症には clostridium difficile の菌毒素のみならず, 生体側の粘膜血流量の低下が関与していることが推定された.