日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
加齢に伴う脳萎縮の進行に寄与する諸因子に関する研究
武田 俊平松沢 大樹川合 宏彰松井 博滋窪田 和雄畑沢 順
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1987 年 24 巻 4 号 p. 348-353

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抄録
昭和53年2月から昭和60年4月までの約7年間に神経学的検査, 頭部CT検査で異常を認められなかった36歳から86歳にいたる (平均63.4歳) 男17人, 女26人の計43人について, 脳血流量, 動脈血圧, 血清総コレステロール値を測定し, これらが脳萎縮の進行に及ぼす影響について調べた. 各被験者について12カ月から92カ月間に渡り (平均46.6カ月) 経時的に頭部CT検査を3回から6回 (平均3.7回) 施行して脳萎縮指数 (脳脊髄液腔容積/頭蓋腔容積×100%) を計測して, 1年間の脳萎縮指数の増加分を年間脳萎縮指数として脳萎縮の進行速度の指標とした. 初回頭部CT検査から79カ月後までの間に (平均28.1カ月) 133Xe吸入法により脳血流量 (イニシャルスロープインデックス: ISI), 聴診法により動脈血圧, 血清総コレステロール値を測定した. 脳血流量 (ISI) と年間脳萎縮指数の間には統計的に有意な負の相関関係があり, 脳血流量の低下が脳萎縮を促進させる事が明らかになった: 年間脳萎縮指数 (%/年)=0.922-0.00995×ISI, r=-0.366, n=43, p<0.02. 収縮期血圧, 拡張期血圧, 平均動脈血圧, 血清総コレステロール値の4因子と年間脳萎縮指数の間には統計的有意性は検出されないものの,すべて負の相関関係を示し, 4因子とも高値なほど脳萎縮の進行が抑制される傾向があった.
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© 社団法人 日本老年医学会
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