日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
長期臥床と痴呆に関する研究
稲垣 俊明山本 俊幸野倉 一也橋詰 良夫新美 達司三竹 重久小鹿 幸生山本 正彦
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1992 年 29 巻 1 号 p. 41-46

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抄録
名古屋市厚生院の附属病院 (以下病院と略す) と特別養護老人ホーム (以下特養と略す) の60歳以上の高齢者の長期臥床と痴呆について検討し, 以下の結果を得た.
1) 長期臥床は42.6%みられ, 加齢とともに高率となり, 性別では女性に高率であった. 長期臥床例の大部分は神経疾患が直接ないし関接に関与し, そのなかで脳血管障害が最も高率であった.
2) 長期臥床例の痴呆の出現率は82.8%であり, 痴呆の程度は高度が高率にみられた. 痴呆の種類は脳血管性痴呆 (以下VDと略す) 45.1%アルツハイマー型痴呆 (以下DATと略す) 23.2%, 混合型痴呆 (以下MIXと略す) 19.5%およびその他 (以下 Others と略す) が12.2%であった. 特にDATは長期臥床の誘因となり, VDは長期臥床の結果として発症する例の多い事が示唆された.
3) 長期臥床の予防には早期にリハビリを開始し, 早期離床に努める事が重要である. 長期臥床例で経管栄養を必要とする症例は約20%で, 全例痴呆を認めた. 従って, 長期臥床のターミナルケアでは経管栄養についての研究が重要である事が示唆された.
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