日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老人施設における百歳老人の知的機能・日常生活動作能力の検討
稲垣 俊明山本 俊幸野倉 一也橋詰 良夫新美 達司三竹 重久小鹿 幸生山本 正彦
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1992 年 29 巻 11 号 p. 849-854

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抄録
名古屋市厚生院およびその関連の老人施設に入院・入所中の100歳以上の老人 (以下百歳老人と略す) 12例 (男1例, 女11例) の知的機能, 日常生活動作能力 (以下ADLと略す) の特徴を明らかにするため, 62歳より99歳の同施設の老人742例 (男242例, 女500例) と比較検討し, 以下の結果を得た.
1) 百歳老人の痴呆の出現率は66.7%であり, 原因疾患ではアルツハイマー型痴呆75%, 混合型痴呆が25%であり, 痴呆の程度はいずれも高度であった. 痴呆のない百歳老人の特徴は, 痴呆老人と比較して知的機能では自分および身近な物に対する認識の衰えがないことと精神症状が認められないことであった.
2) 百歳老人のADLは寝たきり例および排泄の全面介助例が多いが, 食事の自立例は高率であった.
3) 加齢とともに知的機能, ADLは低下した. すなわち百歳老人は通常の老年者の延長線上にあることが示唆された.
4) 百歳老人12例のうち5例が死亡し, その5例について臨床病理学的検討をおこなった結果, 痴呆のない2例およびアルツハイマー型痴呆の2例で臨床診断と病理診断が一致した.
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