抄録
アルツハイマー病 (以下AD) の病態解析, 早期診断を目的として, モノクローナル抗体 (以下 MoAb) を用いてβ蛋白について免疫学的検討を加えた.
β蛋白に相当する合成ペプチドを免疫原として, 細胞融合法によりMoAbを数種作製した. 又, このMoAbはβ蛋白のN末端付近を認識することがRIA法により示された. このMoAbを用いてAD患者の脳脊髄液のウエスタンブロット法を施行したところ, 125および100KD付近にバンドを認めた. 同じサンプルを用いて2次元電気泳動法を施行しても, 125及び100KD, 等電点4.3付近にバンドを認めた. 同様にAD患者の血清を用いて2次元電気泳動法を行ったところ, 20KD, 等電点5.2にスポットを認める場合が経験された. そこで次にAD及び類似疾患12例について血清中の125,20KD蛋白の検出を試み, その陽性頻度と健常人血清のそれとを比較した. その結果120, 20KD蛋白の出現頻度は, 患者が健常人群における陽性率より高い傾向を示した. さらに, 我々のMoAbと他の各種抗体とを用いて, アッセイ系の検討を試みた. サンプルとして, MoAbの反応性が確かめられた神経芽細胞腫細胞株 (NB-39) を用いた. その結果, 我々のMoAbと22C11抗体との組み合せにより検量線を描くことが出来た.
以上の成績は, AD及び類似疾患の病態解析, 早期診断にこれらの研究が役立ち得る可能性を示している.